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中小企業のデジタル人材育成ガイド:DXを内製化するための3ステップ

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目次

はじめに:中小企業がDXを成功させるために「デジタル人材」が不可欠な理由

近年、中小企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心は急速に高まっています。しかし実際の現場では、「何から取り組めば良いのか分からない」「担当者が不足している」「システム導入はしたが活用できていない」といった課題が後を絶ちません。その根本的な要因が “デジタル人材の不足” です。とくに中小企業では IT部門が存在しないケースも多く、兼任担当者が片手間でシステム運用をしている状況も珍しくありません。

DXを成功させる企業には共通点があります。それは、外部に丸投げするのではなく、自社内でデジタルを活用できる人材を育て、改善を“継続できる組織”をつくっているということです。外部の支援はもちろん重要ですが、社内に知識や経験が蓄積されなければ、DXは長続きしません。

本記事では、ITに詳しくない担当者でも理解できるように、中小企業がどのようにデジタル人材を育て、業務効率化から改善プロジェクトまで内製化できる状態を作るのかを、3つのステップに分けてわかりやすく解説していきます。「人材育成」と聞くと難しそうですが、実は今日から取り組める方法が数多くあります。ぜひ、自社のDX推進にお役立てください。

お問い合わせはこちら

DX推進で求められるスキルセットとは

DXを推進するためには、特別な資格や深い専門知識は必ずしも必要ではありません。むしろ中小企業において重要なのは、「現場を理解し、課題に気づき、デジタルと組み合わせて改善できる力」です。これらは、日々の業務の中で自然と身につけていけるスキルばかりです。本章では、DX推進に必要なスキルセットを5つの観点から解説します。社員の育成計画やスキルチェックにも活用できる内容です。

①デジタル基礎リテラシー(IT基礎知識・セキュリティ意識)

DXを進めるうえで最も基本となるのが「デジタル基礎リテラシー」です。これは高度なプログラミングスキルではなく、以下のような“日常的にITを扱うための最低限の知識”を指します。

●最低限備えておきたい基礎スキルの例

分類 内容 活用シーン
パソコン操作 Excelの基本、ショートカット、ファイル管理 日報・データ集計
クラウド理解 クラウドの仕組み、共有フォルダの使い方 情報共有、テレワーク
データ管理 バージョン管理、バックアップの重要性 ミス削減、作業効率化
セキュリティ意識 パスワード管理、MFA、怪しいメールの判定 情報漏えい防止

たとえば Excel で「フィルタの使い方」を覚えるだけでも、データ整理の時間を大幅に短縮できます。「クラウドストレージの共有設定」を理解するだけで、メール添付の手間やミスを減らすことができます。

さらに、近年特に重要なのが セキュリティリテラシー です。

●中小企業が直面しやすいセキュリティリスク

  • 「怪しいメールを開いてしまった」ことによるマルウェア感染

  • 弱いパスワードや使い回しによるアカウント乗っ取り

  • USBメモリ持ち出しによる情報漏えい

  • 社外ネットワークでの作業による危険性

これらは多くの企業で実際に起きており、ニュースでは大企業の事故が取り上げられますが、被害件数としては中小企業が圧倒的に多いと言われています。

対策として、まずは以下のような基本ルールを定着させるだけでも効果は絶大です。

●すぐ始められるセキュリティの基本ルール

  1. パスワードは必ず複雑かつ長くする

  2. 多要素認証(MFA)を導入する

  3. 怪しいメールは開かず、必ず上長に確認する

  4. 重要データはクラウドに保存し、ローカルに置かない

  5. USBメモリでの持ち出しを原則禁止にする

デジタル基礎リテラシーは、難しい知識ではなく「毎日使うツールの正しい使い方」を学ぶだけで習得できます。まずは社員全員がこの基礎を押さえることが、DXの第一歩となります。

②業務プロセス理解と改善発想

DX推進で最も重要なのは、ITスキルそのものではありません。むしろ「現場を深く理解している人の視点」が鍵になります。多くの企業が DX の取り組みで失敗する理由は、「現場のプロセスを理解していないままシステムを導入してしまう」ことにあります。複雑なシステムを入れても、現場の実態に合わなければ使われず、形骸化してしまいます。

そこで必要になるのが、業務プロセスを正しく理解し、改善ポイントを見つける力です。これは“現場経験のある社員だからこそ持っている強み”とも言えます。繰り返し発生するムダや手戻りなど、外部コンサルが気づきにくいポイントを把握しているのは、まさに現場の人材です。

●改善の第一歩は「業務の見える化」

業務の問題点を整理するためには、まず現在の業務プロセスを“見える化”する必要があります。以下のような手順で簡単に作成できます。

【業務プロセスの整理手順(例)】

  1. 担当業務をすべて書き出す(棚卸し)

  2. 業務の流れを図で表す(業務フロー化)

  3. 手作業・紙作業・属人作業に印を付ける

  4. 時間がかかっている作業を数値で把握する

  5. 改善可能な領域をリスト化する

これらを Excel やホワイトボードベースで行うだけで問題点が浮き彫りになります。

以下のような簡単な表を作るだけでも十分です。

工程 現状の作業内容 課題 改善案
受注管理 FAXの内容を手入力してExcelへ転記 入力ミスが多い、手間が大きい Webフォーム化・OCR導入
在庫管理 紙の帳票で管理 情報の共有に時間がかかる クラウド化・リアルタイム更新
報告書作成 Wordで毎回ゼロから作成 時間がかかる テンプレ化・生成AI活用

このように、デジタル化のヒントは現場にこそ潜んでいます。

●改善発想を育てる3つの視点

改善発想を強化するためには、以下の3つの視点が効果的です。

  1. 「なぜ?」を3回繰り返す(真因に気づく)

  2. “作業”ではなく“成果”に注目する(目的を明確化)

  3. デジタルで代替できる作業かどうかを考える

たとえば「会議資料を毎回手で作るのが大変」という課題があった場合、
「そもそもその会議は必要か?」
「資料の形式を簡素化できないか?」
「データを自動集計できないか?」
などの視点で見直せます。

DXは最終的にツール導入で形になりますが、出発点はいつも“現場にある課題”です。これを理解している人材こそ、DX推進に欠かせない存在です。

③データ活用スキル(エクセル・BI・可視化)

DXを進める上で欠かせないのが “データを読み取り、意思決定につなげる力” です。ただし、難しい統計分析を身につける必要はありません。中小企業でまず育成すべきなのは、以下のような「実務レベルのデータ活用スキル」です。

●中小企業で最も使われるデータ活用スキルの3つ

スキル 内容 できるようになること
Excel基本分析 フィルタ、ピボット、関数 日報分析、売上集計、傾向分析
BIツール活用 グラフ・ダッシュボード作成 社内可視化、経営判断の迅速化
データ整理力 重複削除、結合、整形 正確な分析につながる土台形成

たとえば Excel の「ピボットテーブル」を使えるようになるだけで、売上データや作業時間を表やグラフで瞬時に可視化できます。これらは IT に詳しくない社員でも、数時間の研修で習得可能です。

●Excelでのデータ活用の例

日報データが溜まっているものの、活用されていない企業は多いです。そこで、簡単にできる分析例を紹介します。

  • 作業時間の多い業務をランキング化

  • 顧客別の対応件数を可視化

  • エラーが多い工程の頻度を集計

これらはすべて Excel だけで可能です。
社員同士で共有すれば、「どの業務に時間がかかっているのか」「どこを改善すべきか」が見えるようになります。

●BIツールで“誰でも分析できる仕組み”を作る

Excel では限界がある場合、BIツール(Power BI / Tableau / Google Looker Studio など)を導入すると、より正確でリアルタイム性のある分析が可能になります。

BIを使うと…

  • 社員ごとの作業量を自動グラフ化

  • 売上・在庫・生産状況をリアルタイム表示

  • 手入力のミスに気づきやすくなる

  • 会議資料が自動で完成する

など、データ活用が“仕組み化”されます。

●データ可視化のポイント

  1. 色やグラフの種類を統一する(混乱を防ぐ)

  2. 1画面に情報を詰め込みすぎない

  3. 業務目的から逆算して必要な指標を決める

  4. 誰が見ても意味が分かる設計にする

データ活用は専門スキルではなく、「見える化する習慣」を作れば誰でも実践できます。ここからが中小企業のDXを加速させる大きな力になります。

④ローコード/ノーコードでのアプリ構築力

DX人材育成において、近年急速に重要性を増しているのが ローコード/ノーコード開発スキル です。従来、システム開発といえばプログラミング知識が必要で、中小企業が自社でアプリ開発を行うのは困難でした。しかし今は、プログラミングを使わずに業務アプリを自作できる時代になっています。

特に、国産ローコードプラットフォームである Pleasanter(プレザンター) は、中小企業でも利用が広がる代表的なツールです。Excel が使えれば操作できるほど直感的で、業務管理表・ワークフロー・問い合わせ管理など、幅広いアプリを簡単に作成できます。

●ローコード開発が中小企業と相性がいい理由

理由 内容
現場が主体で改善できる 現場の要望を即アプリに反映できる
プログラミングが不要 ITスキルが高くなくても扱える
導入コストが低い 外注開発と比べて圧倒的に低コスト
修正・改善が即日できる 業務変化に合わせて柔軟に更新できる

特に「現場が自分たちで改善を進められる」ことは、DXにおいて非常に大きな武器になります。システムを外注してしまうと、改善スピードが落ち、費用も膨らみやすいですが、ローコードを使えば“小さな改善を高速で回す”ことができます。

●Pleasanterで作れるアプリの具体例

  • 日報管理

  • 顧客管理(CRM)

  • 案件進捗管理

  • 在庫管理

  • 資産管理

  • 見積書/請求書管理

  • 作業依頼管理(ワークフロー)

これらはすべて、クリック操作中心で作成できます。実際に多くの中小企業が数日で業務アプリを作り、社内展開しています。

●ローコードスキルが人材育成にもたらす効果

  1. 現場スタッフのIT理解が一気に深まる

  2. 業務改善のアイデアを形にできるようになる

  3. 成功体験が増え、自走できる人材へ成長する

  4. 属人化していた管理業務が“仕組み化”される

  5. IT担当者がいなくてもDXが進む体制が作れる

ローコード/ノーコードは単なるツールではなく、“現場が自ら改善する文化を作る装置”と言えます。DXを内製化したい企業ほど導入する価値が高い領域です。

⑤AIツール活用力(ChatGPT・画像AI・RPA連携)

DX人材にとって、今や欠かせないスキルが 生成AIの活用力 です。とくに ChatGPT をはじめとする AI チャットツールは、「文章作成」「業務分析」「改善アイデア」「資料作成」など、幅広い業務で活用できます。AI は“使える人ほど成果が出る”ため、習熟度の差がそのまま業務効率に直結します。

●生成AIが社内にもたらす主な効果

活用領域 AIでできること 効果
文書作成 メール・報告書・議事録作成 作業時間削減、質の均一化
データ整理 加工、分析、要約 判断スピード向上
業務分析 業務フロー整理、ムダの発見 改善発想の強化
企画立案 アイデア出し、構成の自動生成 担当者の負担軽減
RPA連携 定型業務の自動化 人的ミスの削減、工数削減

さらに最近では、画像生成AIや動画AIも普及が進み、企画書のデザインやアイキャッチ画像の自動生成など、クリエイティブ業務とも相性が拡大しています。

●AI活用を社内に根付かせるポイント

  1. まずは1人“AI推進リーダー”をつくる

  2. 業務別にAI活用ガイドラインを作る

  3. AIに入力する“プロンプト”の社内共有を行う

  4. 最初から100点を目指さず、「まずAIに聞く」習慣をつける

  5. RPAやローコードと組み合わせて自動化領域を広げる

AI活用の最大の特徴は、“ITが苦手な人でも成果を出しやすい” ことです。中小企業において、デジタル人材育成を加速させる最も効果的な手段のひとつだと言えます。

現場人材を「デジタル人材」に育てる方法

DXを推進するうえで、中小企業が最も重視すべきことは “現場人材を主体に育成すること” です。外部から即戦力人材を雇おうとしても、予算や環境面から難しいケースが多いのが現実です。しかし、現場の業務を深く理解している社員こそ、実は最もDXに向いている人材でもあります。

「うちにはITの得意な人がいない」と悩む企業こそ、現場の人材を DX 人材として育てることで、大きな成果を得られます。本章では、現場社員が小さな成功体験を積みながら、自然とデジタル活用ができるようになる“育成方法”を紹介します。

①現場の“得意分野”から小さくデジタル活用させる

現場人材をデジタル人材へ育成する際に最も重要なのは、「小さく始める」こと です。DXという言葉に触れると「高度なITスキルが必要なのでは?」と身構えてしまう社員も多くいます。しかし実際には、日々の業務の中に“デジタル活用のきっかけ”は数多く存在しています。

●まずは「得意業務 × デジタル」の掛け合わせから

例えば、以下のような身近な業務で簡単にデジタル化が可能です。

現場の得意業務 デジタル活用の例 小さな成功体験
日報作成が早い 日報アプリ化(Pleasanter等) 入力ミス削減、集計自動化
顧客対応が丁寧 CRMへの記録・テンプレ化 情報共有がスムーズに
在庫に詳しい 在庫管理アプリ作成 欠品・過剰在庫の防止
書類整理が上手 電子帳票化・フォルダ整備 ペーパーレス促進

ここで重要なのは、新しいスキルから教えないこと です。
「本人が得意な領域 × 便利なデジタルツール」から始めると、習得スピードが速く、モチベーションが維持されやすくなります。

●初期段階での“やってはいけない”教育方法

  • いきなり難しいシステム研修を受けさせる

  • 現場を理解しないままツールを押し付ける

  • IT用語を多用し、心理的ハードルを上げる

  • 失敗を責めてしまい、挑戦できない雰囲気をつくる

これらはデジタル人材育成が失敗する典型例です。

●小さな成功体験が「自走力」を生む

小さな改善でも、現場の社員が自分で作った仕組みがうまく動くと、必ず自信につながります。例えば、
「これ、便利だね!」「教えてほしい!」
と他部署から声がかかるなど、認められる経験が増えると、自然と成長が加速します。

現場の強みを活かした“スモールDX”こそ、中小企業にとって最も再現性が高い育成方法です。

②業務×ITをつなぐ“ハイブリッド人材”を育てる

DX推進を成功させる企業には、必ず “業務とITをつなぐ存在” がいます。それが ハイブリッド人材 です。これは、必ずしもITの専門家を指すわけではありません。以下のような特性を持つ人がハイブリッド人材となります。

●ハイブリッド人材の主な特徴

  • 現場の業務や課題をよく理解している

  • ITに対して抵抗が少なく、新しいツールを試すことに前向き

  • 部署間の調整や情報共有が得意

  • 改善や仕組みづくりに興味がある

こうした特性を持つ人材は、実はどの企業にも必ず1〜2名は存在します。大きな組織でなくても、このハイブリッド人材を中心軸に育成を進めることで、DXの推進力は一気に向上します。

●ハイブリッド人材が果たす3つの役割

  1. 現場の課題を言語化する(課題発見)

  2. 最適なツールや方法を選ぶ(ソリューション検討)

  3. 社内へ展開し、定着させる(運用サポート)

この役割を一人の社員がすべて対応する必要はありません。しかし、“業務側とIT側の接着剤”として機能する存在がいることで、DX推進の速度と成功率は大きく変わります。

●育成のために段階的に習得すべきスキル

段階 スキル 内容
STEP1 IT基礎知識 クラウド、データ管理、セキュリティ
STEP2 現場業務の分析力 業務フロー整理、課題発見
STEP3 改善企画力 優先度付け、導入目的の設定
STEP4 ツール活用力 Excel、BI、ローコード、AI
STEP5 推進力 社内説明、展開、教育

会社としては、ハイブリッド人材を“社内DXリーダー”として明確に位置づけることが重要です。
役割と期待が明確になることで、本人の成長意欲も高まり、成果につながりやすくなります。

③目的別に教育ロードマップを作成する

DX人材育成において、最も大きな失敗要因は 「教育内容が散らばり、長続きしない」 ことです。
これを防ぐために有効なのが、目的別の教育ロードマップ を作成することです。

教育ロードマップとは、
「誰に」「どのスキルを」「どの順番で」「どれくらいの期間で」習得させるのか
を明確にした計画です。これがあるだけで、育成は一気に進みやすくなります。

●対象別のロードマップ例

対象 習得すべきスキル ゴール
現場担当者 IT基礎、Excel、簡易アプリ作成 担当業務の効率化ができる
管理者(リーダー層) データ分析、業務フロー改善、AI活用 チーム単位の改善ができる
経営層 DXの方向性理解、投資判断、リスク管理 全社最適のDX判断ができる

現場担当者には「まず使ってみる」レベルのスキルを、管理者には「改善を企画する」スキルを、経営層には「判断する」スキルを与える必要があります。同じ研修を全員に実施してもうまくいかない理由はここにあります。

●ロードマップ設計のポイント

  1. 1年間単位で計画する(短期・中期を設定)

  2. “学ぶ → 実践 → 振り返り”のサイクルを含める

  3. 全員共通の基礎研修 + 役割別の追加スキルを組み合わせる

  4. 研修よりも“実務で使う場面”を先に作る

教育は「教える」だけでは効果が出ません。
実際に手を動かしながら業務に役立ててこそ、スキルは定着します。

④人材定着のための評価制度・キャリア設計

デジタル人材を育成しても、定着しなければ組織のDXは前進しません。特に中小企業では、「せっかく育てた人材が別部署へ異動してしまう」「他社に転職してしまう」 といったケースが頻発します。その要因の多くは、
“デジタル活用が評価されない職場文化” にあります。

●DX推進では「成果の見え方」が非常に重要

DXの成果は売上のように数字で反映されないことも多く、
・業務効率の改善
・ミス削減
・情報共有の高度化
など、目に見えにくい貢献になりがちです。すると、本人の努力が評価されず、モチベーションが下がってしまうのです。

そこで重要なのが、DX人材を正しく評価する指標を設けること です。

●評価項目の例(DX人材向け)

観点 評価項目例 狙い
業務改善 業務時間の削減、手戻りの削減 生産性向上の見える化
自走力 ツール学習、自主改善の提案数 主体性の評価
影響力 他部署への展開支援、教育実施 DX文化の拡大
協働性 現場・管理者との調整力 推進役としての機能
基礎知識 IT基礎・セキュリティ理解 リスク低減への貢献

これらを評価制度に取り入れることで、DXを進めた社員が正当に評価され、人材の流出を防ぎ、継続的な育成環境を整えることができます。

●キャリアパス設計も鍵

中小企業こそ、
「デジタル推進担当」「業務改革リーダー」「データ活用リーダー」
など、専門キャリアを明確に設定すると、社員が将来像を持ちやすくなり、自発的に学ぶ文化が育ちます。

DXは一部の人が奮闘するだけでは成功しません。
“評価制度で支え、キャリアパスで伸ばす” ことが、実は最も効果的な育成施策のひとつです。

⑤社内コミュニケーションでDXを文化にする

DXの定着で最も重要なのが、“DXが特別な活動ではなく、日常業務の一部になる状態” をつくることです。つまり DX を 文化として根付かせる 必要があります。

●DXが文化として定着しない企業の特徴

  • 改善事例が共有されない

  • ツール導入が「やらされ感」で進む

  • 成果が一部の担当者に偏る

  • 相談できる環境がない

  • 目的ではなく「ツール導入」そのものがゴールになっている

これらの問題は、社内コミュニケーションを改善するだけで解決できる場合が多い です。

●文化をつくるための具体施策

1. DX共有会の定期開催

月1回でも構いません。
改善した事例や、使ってみて良かったツールを共有します。
「すごい改善をした人」ではなく、
“小さな改善をした人”を称賛する文化 をつくるのがポイント。

2. 社内チャットで質問しやすい環境をつくる

Mattermost などのチャットツールを使い、
「DX相談チャンネル」を作るのも効果的です。
質問しやすい雰囲気があるだけで、現場の抵抗感は大きく減ります。

3. 見える化ボードを設置する

  • 改善件数

  • 教育参加率

  • ツール利用率
    を掲示すると、組織全体の意識が高まります。

4. 経営層がDXの重要性を発信する

「やるべき理由」「期待する効果」を経営者の言葉で伝えると、現場の動きが変わります。

DXに必要なのは、ツールではありません。
共通言語と共通目的を共有する環境 です。
コミュニケーションが活発な企業ほど、DXは確実に進みます。

OJT・ローコード・生成AIの活用による育成手法

ここからは、より実践的で効果が高い“育成手法”に踏み込みます。
DX人材の育成は座学だけでは絶対に身につきません。
「教える」より「一緒にやる」のが最速の育成方法 です。

特に中小企業では、学んだことをすぐに実務で使える環境が整っており、OJT(On the Job Training)との相性が非常に良いのが特徴です。さらにローコードや生成AIを活用することで、従来よりも圧倒的に早く成果が出せるようになります。

本章では、現場でそのまま使える5つの育成手法を紹介します。

①OJT型DX推進:業務改善プロジェクトを教材にする

OJT型DXとは、“業務改善プロジェクトそのものを教材にする”育成方法です。
もっとも効果的で成長スピードが速い方法のひとつで、近年多くの企業が導入しています。

●OJT型DXが効果的な理由

  • 業務の文脈を理解した状態で学べる

  • 現場の課題に直結する内容なので吸収が早い

  • 成果が見えやすくモチベーションが続く

  • 実務で使うスキルがそのまま身につく

  • プロジェクトが“成功体験”になり学習意欲が加速する

●OJT型DXの進め方(基本フロー)

STEP 内容 目的
1 現場課題の洗い出し 改善対象の明確化
2 目標数値の設定 効果を測定可能に
3 改善案の検討 ツール・方法を選ぶ
4 改善実行 アプリ作成・業務フロー変更
5 効果検証 成果を数字で振り返る
6 仕組み化と展開 他部署への横展開

●実例:製造業でのOJT型DX

ある製造業では、
「紙の作業指示書 → デジタル化」
という改善プロジェクトをOJTとして取り入れました。

結果、

  • 探す時間が1日30分以上削減

  • 手書きの読みにくさ問題を解消

  • 作業ミスが月5件→0件へ削減

  • 新人スタッフもすぐ作業できるように

と大きな成果が出ており、まさに
“学びながら成果を出す”
理想的なDX人材育成になっています。

②ローコードツールを使った「現場開発チーム」づくり

ローコード/ノーコードツールは、DX人材を育てるだけでなく、“現場が自ら開発する文化”を作る強力な武器 です。これを組織として活用するには、1人だけが頑張るのではなく、小さな現場開発チーム(市民開発チーム) を構築することが効果的です。

●現場開発チームが企業にもたらす効果

  • ツール導入後の運用が自走しやすい

  • 属人化が解消され、複数人で改善が回る

  • 現場同士が相談し合う文化が生まれる

  • 改善スピードが飛躍的に向上する

  • 外注費用を大幅に削減できる

特に Pleasanter は、
「Excelが使える人なら開発できる」
という特性から、現場主導の改善と非常に相性が良いのが特徴です。

●現場開発チームの基本構成

役割 主な内容
メイン開発者 画面作成・項目設計・画面改善
現場リーダー 業務要件整理、課題の言語化
ITサポート担当 セキュリティ管理、権限設定
利用部門メンバー 実際の運用テスト、改善点の提案

●成功のポイント

  1. 最初から大規模にしない(2〜3人で十分)

  2. 最初のテーマは“誰もが困っている業務”から設定する

  3. 改善案の共有会を定期開催する

  4. 改善を“褒める文化”をつくる(重要)

  5. 「業務改善=開発チームの仕事」ではなく「全員参加」の雰囲気をつくる

ローコードプロジェクトは成功体験が生まれやすいため、人材育成の象徴的活動として非常に効果が大きい手法です。

③生成AIを活用した“自走型”学習サイクル構築

生成AIは“学習支援ツール”としての価値が非常に高く、DX人材育成のハードルを大きく下げています。特に ChatGPT のような対話型AIは、「質問すれば何でも教えてくれる社内メンター」 のような存在として機能します。

●生成AIが学習を加速させる理由

  • わからない点をすぐ質問できる

  • 説明が丁寧で繰り返しても嫌な顔をされない

  • 実例やサンプルをその場で作成できる

  • プロンプトを工夫すれば専門家レベルの知識も得られる

  • 社内で統一的な資料・文章を作れるようになる

●AIを学習サイクルに組み込む流れ

Step 内容
1 まずAIに質問し、情報の“幅”を得る
2 実務で使いながら“必要な知識”を絞る
3 AIに改善案を聞き、業務最適化へ反映
4 成果物(文章・表・資料)をAIに整形させる
5 使いながら気づいた点をプロンプトとして改善

AIは「学んでは忘れる」という従来型の学習の弱点を克服し、“実務で使う→AIに聞いて補正する”サイクル を回すことで短期間でスキルが定着します。

●企業での導入成功例

  • 社員がAIを使って毎朝のレポートを作成(作業時間70%削減)

  • 会議資料のドラフトをAIが自動生成

  • データ加工のマクロをAIが作成し「分析担当者」が不要に

  • 学習用プロンプト集を社内で共有し、全体のスキル底上げに成功

AI活用力は独学が最も成長しやすい領域でもあり、「まずAIに聞く」という習慣がつくと、DX人材育成が一気に加速します。

④AI×RPAによる自動化スキルの育成

AIとRPA(Robotic Process Automation)を組み合わせることで、現場の“定型作業”を大幅に自動化 できます。特に中小企業では、事務作業や転記作業が多く、自動化の効果が非常に大きい領域です。

●自動化すると効果が大きい業務の例

業務カテゴリ 自動化内容 効果
データ転記 Excel→システムへの入力 ミス削減・時間短縮
書類作成 見積書/請求書生成 作成スピード向上
メール業務 定型文の自動送信 対応漏れ防止
日次集計 売上/作業時間の集計 報告業務の負担軽減
顧客対応 FAQ自動応答 対応工数削減

●AI×RPAの活用が育成につながる理由

  1. 具体的な“成果物”として目に見える

  2. 業務改善の実感が大きく、モチベーションが高い

  3. 改善サイクルを短期間で経験できる

  4. ITへの理解が一気に深まる

  5. 外注せず社内で改善が回るようになる

一度自動化が成功すると、他業務への応用が進むため、継続的な改善文化の起点 となります。

⑤外部ツールとの連携で“現場DX”を加速させる

DX初心者の多くは「単体のツール導入」で止まってしまいます。しかし、最もDX効果が出るのは、複数ツールを連携させた“仕組み化” です。

●よく使われるツール連携パターン

組み合わせ 内容 効果
Pleasanter × BI 入力データをリアルタイムで可視化 現場と管理層の情報格差を解消
チャットツール × AI 問い合わせ対応・ナレッジ共有 属人化防止・教育コスト削減
RPA × Excel データ整形や集計を自動化 毎日の手作業を削減
Form × DB 入力内容を自動蓄積 紙の廃止・転記作業削減

多くの中小企業が、
「Excel → 電子フォーム化 → DB蓄積 → BI可視化 → AI分析」
という流れに乗せることで、DXを一気に加速させています。

●ツール連携が育成効果を高める理由

  • 「データが流れる仕組み」を理解できる

  • 業務全体を俯瞰する視点が育つ

  • スキルを横展開しやすい

  • 次の改善アイデアが自然と生まれる

単なるツール操作の習得ではなく、“業務全体をデザインできる人材” に成長する基盤になります。

外部研修・伴走支援サービスの活用例

DX人材育成は社内だけで完結する必要はありません。むしろ中小企業ほど “外部の力を上手く取り入れる” ことが成功の近道になります。ここでは、研修・伴走支援・助成金など、外部資源を活かすための具体的な方法を紹介します。

①研修サービスの種類(基礎・実務・ツール活用別)

企業が研修を選ぶ際に迷いやすいのが、「どの研修が自社に合っているかわからない」という点です。実は研修には大きく3種類あり、それぞれ目的も効果も異なります。

●DX研修の3分類と特徴

種類 内容 向いている対象 効果
基礎研修 IT基礎、セキュリティ、DX概論 全社員 デジタルの最低ラインを統一
実務研修 業務改善、データ活用、プロセス整理 現場・管理者 現場の改善力アップ
ツール研修 Excel / BI / RPA / ローコード 担当者・推進者 即効性のあるスキル取得

●研修選定のポイント

  1. 目的に合っているか(リテラシー向上 or スキル習得)

  2. 業務にすぐ活かせる内容になっているか

  3. “講義だけ”で終わらない実践形式になっているか

  4. 研修後のフォローがあるか

特に中小企業の場合、「学んだけど使わない」状態が最も無駄です。
実務に直結する研修を選ぶことが、育成の成功につながります。

②伴走支援型サービスで“内製化”を最短で実現

最も成果が出やすい外部支援が 伴走支援(ハンズオン支援) です。
これは、外部の専門家が講師として教えるだけでなく、
「実際に社内の改善プロジェクトに並走してくれる」 形式です。

●伴走支援の特徴

  • 実務を教材にするため、学びが定着しやすい

  • 社内の改善成果が確実に積み上がる

  • 社員が“自走するための型”が身につく

  • 外注に比べ、中長期で見た費用対効果が高い

●どんな企業に向いているか?

  • DXがどこから始めればよいかわからない

  • IT担当が1人しかいない

  • 改善活動が属人化している

  • 教育に割く時間やマンパワーが不足している

伴走支援は、まさに中小企業のための支援形態ともいえるほど、効果が高く現実的な選択肢です。

③補助金・助成金を活用した研修費用の最適化

DX人材育成やツール導入は、補助金や助成金を活用すれば費用負担を大幅に軽減できます。
特に以下の制度は多くの企業が活用しています。

●代表的な支援制度

名称 内容 対象
IT導入補助金 ITツール・クラウド導入補助 中小企業全般
ものづくり補助金 生産性向上のための設備・システム導入 製造業中心
人材開発支援助成金 ITスキル習得のための研修費助成 全業種対象
業務改善助成金 業務改善計画に伴う設備投資 労働環境向上施策

特に「人材開発支援助成金」は、
研修費+社員の賃金補助 がセットになっており、
人材育成と相性が非常に良い制度です。

●補助金活用のポイント

  • 申請には時間がかかるため“早めの情報収集”が重要

  • 外部の専門家(社労士・支援事業者)を活用すると成功率UP

  • DX計画を事前に整理しておくことで申請がスムーズ

補助金を活用すれば、「費用がネックでDXを進められない」という企業でも育成に着手できます。

④成功事例:小規模企業でもDXが実現したケース

ここでは、実際に小さな企業でもDXを実現できた成功事例を、イメージしやすい形で紹介します。

●事例①:製造業(従業員30名)

課題:紙の作業指示書によるミスと手戻り

改善:Pleasanterで作業指示管理システムを自作

  • 入力ミスが大幅減

  • 指示の抜け漏れゼロ

  • 新人が即戦力化
    現場リーダーがDX推進者として成長し、社内展開が進行中

●事例②:食品卸売業(従業員12名)

課題:FAX受注・転記作業に1日2時間かかる

改善:OCR+自動仕分けフローを構築

  • 人為ミスほぼゼロ

  • 担当者の残業が月15時間削減
    チーム全体で改善を共有し、データ活用の文化が定着

●事例③:サービス業(従業員8名)

課題:問い合わせ対応が属人化

改善:Mattermostで共有+AIで返信テンプレ生成

  • 対応漏れがゼロに

  • 文章の質が均一化
    IT未経験の社員がAI活用の中心メンバーに成長

小規模企業でも“できることから始める”ことで、大きな効果を出せます。

⑤失敗しやすいポイントと回避策

DX人材育成には成功例と同じくらい、失敗例も存在します。
特に中小企業が陥りやすいのは以下の5つです。

●失敗ポイントと解決策

失敗パターン 原因 回避策
ツール導入が目的化 現場の課題が不明確 先に“課題整理”から開始
1人だけが頑張る 組織としての支援がない ハイブリッド人材を複数育成
研修を受けるだけで終わる 実務で使わない OJTで実案件に適用
経営層の理解不足 目的の共有がない 経営層向け説明会を開催
成果が見えない 指標が設定されていない KPIを明確化・見える化

DXは「小さく始めて、大きく育てる」ことが鉄則です。
失敗を避けるには、仕組みづくりと継続性が重要です。

まとめ:デジタル人材育成は「仕組みづくり」で継続する

中小企業がDXを成功させる鍵は、特別なエンジニア採用ではなく、「既存社員をデジタル人材として育てる仕組みを作ること」 にあります。

本記事で紹介したように、

  • デジタル基礎リテラシー

  • データ活用力

  • ローコード開発力

  • AI活用力

  • 現場改善力
    これらはすべて、日常業務の中で自然と育てていくことができます。

さらに、OJT・伴走支援・補助金を組み合わせることで、
“低コストかつ高い再現性”で社内にDXを定着させることが可能です。

DXは大企業だけのものではありません。
今日から始められる小さな改善を積み重ねることで、
必ず成果につながる“自社ならではのDX”が形になります。

もし、
「どこから始めればよいか悩んでいる」
「人材が育つ仕組みを作りたい」
という場合は、お気軽にご相談ください。

御社の状況に合わせた最適なステップをご提案いたします。

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