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DXを進めたいのに現場が動かない会社で起きていること

はじめに:DXを進めたいのに現場が動かない会社で起きていること
「DXを進めよう」という方針は出たものの、現場からは特に変化が起きていない。
会議ではDXという言葉が飛び交うのに、日々の業務は相変わらずExcel・紙・メール中心。
こうした状況に、心当たりのある中小企業は少なくありません。
多くの企業で起きているのは、「DX=ITツール導入」という誤解と、「現場業務を起点に考えられていないDX」です。その結果、現場からは「また新しいことをやらされるのか」「忙しいのに余計な仕事が増える」という反発が生まれ、DXは掛け声倒れに終わってしまいます。
本記事では、DXが進まない企業で実際に起きている“現場の構造的な問題”を整理しながら、
中小企業でも無理なく実践できる「現場が動き出すDXの進め方」を解説します。
ITに詳しくなくても理解でき、
「まず何から始めればいいのか」が明確になる内容を目指します。
DXが進まない企業に共通する現場の課題構造
DXが停滞している企業には、いくつかの共通点があります。
それは「ツール」や「予算」の問題ではなく、現場の業務構造や意識の問題です。
この章では、DXが進まない企業の現場で何が起きているのかを、構造的に整理します。
① 現場がDXを「自分ごと」と捉えられていない理由
結論から言うと、DXの目的が現場に伝わっていないことが最大の原因です。
経営層や管理部門ではDXの必要性を理解していても、現場では「なぜやるのか」が分からないまま話が進んでいるケースが非常に多く見られます。
整理ブロック:よくあるDXの伝わり方の問題
| 経営・管理側の認識 | 現場の受け止め方 |
|---|---|
| 業務効率化のため | 仕事が増えそう |
| データ活用のため | 難しそう・自分には関係ない |
| 将来のために必要 | 今忙しいのに余計な話 |
補足解説
現場担当者の本音としてよく聞くのが、
「それって、私たちの仕事がどう楽になるんですか?」という声です。
DXの説明が抽象的だと、現場では
「会社の方針だから仕方なくやるもの」
と受け取られてしまいます。
まずは現場目線でのメリット、例えば
-
二重入力が減る
-
探し物の時間が減る
-
ミスが減る
といった具体的な変化を示すことが重要です。
② 業務が属人化・ブラックボックス化している現状
DX以前に、業務の中身が整理されていない企業も多くあります。
「その作業は○○さんしか分からない」「引き継ぎ資料が存在しない」といった状態では、DXを進めようにもスタート地点に立てません。
整理ブロック:属人化した業務の特徴
-
手順書・マニュアルがない
-
なぜその作業をしているのか説明できない
-
トラブル対応が個人の経験頼り
-
不在時に業務が止まる
補足解説
DXは「業務をデジタルに置き換えること」ではなく、
業務を整理・見える化することから始まります。
属人化した業務は、
-
改善点が見えない
-
ツールに落とし込めない
という問題を抱えています。
現場の担当者から
「今までこうやってきたので…」
という言葉が出てきたら、DX以前に業務棚卸しが必要なサインです。
③ 「忙しくて改善どころではない」現場の本音
DXが進まない理由として、現場から最も多く聞かれるのが
「とにかく忙しい」という声です。
整理ブロック:現場が忙しくなる原因
-
手作業・転記作業が多い
-
同じ情報を複数の資料に入力している
-
問い合わせ対応が属人的
-
突発対応が日常化している
補足解説
皮肉なことに、DXが必要な現場ほど忙しく、DXに取り組む余裕がありません。
現場担当者の典型的なセリフは、
「改善したほうがいいのは分かってる。でも今じゃない。」
だからこそ、DXは
「現場に負担をかけずに始める」
「忙しさを減らすことを最優先にする」
という視点が欠かせません。
④ ITアレルギーが生まれる組織文化の問題
過去のシステム導入失敗が、DXへの抵抗感を生んでいるケースも少なくありません。
整理ブロック:ITアレルギーが生まれる背景
| 過去の経験 | 現在の意識 |
|---|---|
| 使いにくいシステム導入 | 「また失敗するのでは」 |
| 説明不足のツール | 「結局使わされるだけ」 |
| 現場無視の導入 | 「どうせ意見は聞かれない」 |
補足解説
ITが苦手なのではなく、
「振り回された経験」が苦手意識を作っているのです。
DXを進める際は、
-
完璧を目指さない
-
現場の声を反映する
-
途中で修正する前提で進める
といった姿勢を明確にすることが、心理的ハードルを下げるポイントになります。
DXが「掛け声」で終わる原因と判断を誤りやすいポイント
ここまで見てきたように、DXが進まない背景には現場側の事情があります。
一方で、判断を下す側(経営・管理層)の意思決定そのものがDXを止めてしまっているケースも非常に多く見られます。
この章では、DXが「やっているつもり」で終わってしまう企業に共通する判断ミスを整理し、なぜ現場と乖離が生まれるのかを解説します。
① 「とりあえずDX」という曖昧な方針の危険性
結論から言うと、DXを目的にしてしまうと失敗します。
「競合もやっているから」「国が推進しているから」といった理由だけでDXを掲げると、現場は動けません。
整理ブロック:曖昧なDX方針の典型例
| 方針の言い回し | 現場の反応 |
|---|---|
| DXを推進する | 何をすればいいの? |
| デジタル化を進める | どの業務を? |
| ITを活用する | 具体的には? |
補足解説
現場でよく聞くのが、
「結局、何を変えればいいんですか?」
という声です。
DXはスローガンではなく、
「どの業務の、どのムダを、どう変えるか」
まで落とし込んで初めて意味を持ちます。
まずは
-
時間がかかっている業務
-
ミスが多い業務
-
属人化している業務
など、具体的な業務課題をDXの起点にする必要があります。
② 成功事例の表面だけを真似してしまう落とし穴
DX推進時によくあるのが、大企業の成功事例をそのまま参考にしてしまうことです。
整理ブロック:大企業DXと中小企業DXの違い
| 観点 | 大企業 | 中小企業 |
|---|---|---|
| 予算 | 潤沢 | 限られている |
| 人材 | IT専門部門あり | 兼務が多い |
| 業務規模 | 標準化されている | 属人化しがち |
補足解説
大企業向けのDX事例は、
-
専門部門が前提
-
数千万円規模の投資
-
数年単位の計画
といった条件で成り立っています。
中小企業が同じことをしようとすると、
「コストだけかかって成果が出ない」
という結果になりがちです。
中小企業に必要なのは、
自社の業務規模・人員に合ったDXであり、
派手さよりも「確実に効く改善」です。
③ ITツール導入=DXだと誤解してしまう判断ミス
非常に多いのが、
「ツールを入れた=DXが進んだ」
という誤解です。
整理ブロック:DXとIT導入の違い
| 項目 | ITツール導入 | DX |
|---|---|---|
| 目的 | 作業を置き換える | 業務そのものを変える |
| 視点 | システム中心 | 業務・人中心 |
| 成果 | 効果が見えにくい | 改善が実感できる |
補足解説
例えば、
紙の申請書をそのままシステム化すると、
「入力が増えただけ」
という状態になります。
DXでは、
-
その申請は本当に必要か
-
承認フローは適切か
といった業務の見直しが前提です。
現場担当者の
「前より面倒になった」
という声が出たら、それはDXではありません。
④ 効果測定ができず、途中で止まってしまう理由
DXが途中で止まる最大の原因は、成果が見えないことです。
整理ブロック:効果測定がないDXの問題点
-
成功か失敗か分からない
-
現場のモチベーションが下がる
-
次の改善につながらない
整理ブロック:最低限見るべき指標例
| 観点 | 指標例 |
|---|---|
| 時間 | 作業時間・残業時間 |
| 品質 | ミス件数・差戻し回数 |
| 負担 | 問い合わせ件数 |
補足解説
難しいKPIは不要です。
現場が
「楽になった」
「前より早い」
と実感できるかどうかが最重要です。
数値で可視化できると、
DXは「やらされ仕事」から
「意味のある改善」に変わります。
ツール導入型DXと業務起点DXの決定的な違い
DXがうまくいく企業と、そうでない企業の違いは、
スタート地点が「ツール」か「業務」かにあります。
この章では、2つのDXアプローチを比較しながら、中小企業に適した考え方を整理します。
① ツール先行型DXで起こりがちな失敗パターン
結論として、ツール先行型DXは現場の負担を増やしやすい傾向があります。
整理ブロック:ツール先行型DXの典型的な流れ
-
DXをやることが決まる
-
ツールを選定する
-
現場に使わせる
-
定着せずに放置される
整理ブロック:現場で起きる問題
-
操作を覚えるだけで精一杯
-
業務フローが合わない
-
Excel併用が続く
補足解説
現場担当者の本音は、
「ツールのために仕事をしている感じ」
です。
業務が変わらないままツールだけ増えると、
DXは負担増加プロジェクトになってしまいます。
② 業務起点DXとは何か?考え方の基本
業務起点DXとは、
「困っている業務」から改善を始めるDXです。
整理ブロック:業務起点DXの考え方
-
現場の不満・ムダを洗い出す
-
業務を整理・簡素化する
-
必要な部分だけITを使う
補足解説
ITは主役ではなく、手段です。
例えば、
「問い合わせ対応が大変」
→ 情報を一元管理する
→ その結果、ツールを使う
という順番が正解です。
③ 現場改善とDXが自然につながる状態とは
理想的なDXは、
現場改善の延長線上にあります。
整理ブロック:DXが自然に進む状態
| 状態 | 現場の反応 |
|---|---|
| 業務が整理される | 分かりやすい |
| ムダが減る | 楽になった |
| 効果が見える | 続けたい |
補足解説
現場が
「これ、他の業務にも使えそう」
と言い出したら、DXは成功し始めています。
④ 中小企業にこそ業務起点DXが向いている理由
中小企業は、意思決定が早く、業務も柔軟です。
整理ブロック:中小企業 × 業務起点DXの相性
-
小さく始められる
-
現場の声が届きやすい
-
改善スピードが速い
補足解説
完璧なDX計画は不要です。
「1業務を確実に良くする」
この積み重ねが、結果的に全社DXにつながります。
DXを1業務から始め、現場を動かす現実的な進め方
ここまでで見てきたように、DXを成功させるためには
「大きく始めない」「現場を置き去りにしない」ことが重要です。
この章では、中小企業が無理なくDXを前に進めるための具体的な手順を、実務目線で整理します。
① 最初のDXテーマは「小さく・具体的」に選ぶ
結論から言うと、DXは1業務から始めるのが最短ルートです。
全社DXを掲げると、準備だけで止まってしまいます。
整理ブロック:最初のDXテーマに向いている業務
| 観点 | 具体例 |
|---|---|
| 手間が多い | 日報、申請、問い合わせ管理 |
| ミスが多い | 転記作業、Excel集計 |
| 属人化 | 引き継ぎが難しい業務 |
補足解説
ポイントは「失敗しても致命傷にならない業務」を選ぶことです。
現場担当者から
「ここ、正直やりづらいんですよね」
という声が出る業務は、DXテーマとして最適です。
② 現場ヒアリングで「不満」を見える化する
DXの種は、現場の不満の中にあります。
整理ブロック:ヒアリング時に聞くべき質問例
-
どの作業が一番時間かかっていますか?
-
二度手間だと感じる業務はありますか?
-
ミスが起きやすいのはどこですか?
整理ブロック:よく出てくる現場の声
| 現場の声 | DXのヒント |
|---|---|
| 探すのが大変 | 情報の一元管理 |
| 毎回同じ質問が来る | 共有ルールの整備 |
| 手入力が多い | 入力項目の見直し |
補足解説
この段階では、
ITの話をしないことが重要です。
「どう楽にしたいか」を聞き、
ツールの話は後回しにしましょう。
③ 現場と一緒に改善案を作る進め方
DXは、現場参加型で進めるほど成功率が上がります。
整理ブロック:現場参加型DXの進め方
-
現状業務を書き出す
-
ムダ・重複を洗い出す
-
「こうなったら楽」を言語化
-
改善案を一緒に決める
補足解説
このとき重要なのは、
「決めてから説明する」のではなく、
「一緒に決める」ことです。
現場担当者が
「これなら使えそう」
と言った改善案は、定着率がまったく違います。
④ 小さな成功体験を社内に横展開する方法
1業務で成果が出たら、必ず社内に共有します。
整理ブロック:横展開時のポイント
-
効果を数字で示す
-
現場の声を紹介する
-
「完璧ではない」と伝える
整理ブロック:共有時の例
| 共有内容 | 伝え方 |
|---|---|
| 作業時間 | 30%削減 |
| 現場の声 | 「前より楽」 |
| 次の展開 | 他業務にも応用可能 |
補足解説
成功事例は、
経営の言葉より現場の言葉のほうが刺さります。
「うちの部署でもできそう」
と思わせることが、DX文化定着のカギです。
⑤ 外部パートナーをうまく活用する判断軸
自社だけで進めるのが難しい場合、外部の力を借りるのも有効です。
整理ブロック:良いパートナーの特徴
-
業務理解から入ってくれる
-
ツールを押し売りしない
-
小さく始める提案をする
整理ブロック:避けたいパターン
| パターン | リスク |
|---|---|
| ツール前提提案 | 現場不一致 |
| 大規模導入 | 失敗時の影響大 |
| 専門用語だらけ | 理解が進まない |
補足解説
相談時は、
「この業務、どう思いますか?」
と聞いてみてください。
業務の話をしない会社は、DXパートナー向きではありません。
まとめ:DXを進めたいのに現場が動かない会社で起きていること
本記事では、DXが進まない中小企業で起きている問題を、現場視点で整理しました。
要点整理
-
DXが進まない原因は「IT」ではなく「業務」と「人」
-
ツール導入だけではDXは進まない
-
現場の不満を起点に、小さく始めることが重要
-
成功体験を積み重ねることでDXは定着する
まず何から始めるべきか
-
現場の業務を1つ選ぶ
-
不満・ムダを書き出す
-
楽になる形を一緒に考える
この3ステップだけでも、DXは確実に前進します。
「自社の場合、どの業務から手を付けるべきか分からない」
「現場を巻き込む進め方に不安がある」
そう感じたら、一度相談してみるのも一つの選択です。
無理な売り込みではなく、業務整理の壁打ち相手として活用することで、
DXの第一歩が見えてくるはずです。

