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ローコード開発とは?中小企業が業務アプリを自社開発するメリットと成功の秘訣

はじめに:ローコードで業務アプリを自社開発するメリットとは
近年、中小企業の現場では「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたい」「業務効率をもっと上げたい」といったニーズが急速に高まっています。しかし、業務システムの導入となると、以下のような課題に直面することが多いのではないでしょうか?
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開発会社に依頼するとコストが高い
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要件のすり合わせに時間がかかる
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社内にエンジニアがいないので自社開発は無理
そんな中、専門知識がなくても業務アプリが作れる「ローコード開発」が、中小企業の現場で大きな注目を集めています。プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップで画面を作成し、社内業務にぴったりのアプリを短期間で構築できるのが最大の魅力です。
本記事では、ローコード開発の特徴と活用メリット、そして中小企業が自社で業務アプリを開発し、DXを自走する企業になるためのステップをわかりやすくご紹介します。
スピード感のある開発が可能に
ローコード開発最大の魅力は、なんといっても「スピード感」です。従来の開発手法では数ヶ月を要するシステム構築が、ローコードツールを使えば数日で完了するケースも少なくありません。特に中小企業では、限られた予算・人材の中でスピーディに業務改善を図る必要があるため、この特性は非常に有利です。
従来開発との違いとは?最短数日で動く業務アプリを
従来の業務アプリ開発は、以下のようなステップを踏む必要があります。
ステップ | 内容 | 所要期間(目安) |
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要件定義 | 業務内容のヒアリングと整理 | 2〜4週間 |
設計 | UI・処理・データベースの設計 | 3〜6週間 |
開発 | プログラミング実装 | 2〜3ヶ月 |
テスト | バグ修正・動作確認 | 1〜2週間 |
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既存テンプレートやコンポーネントを活用
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ドラッグ&ドロップでUIを構築
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データベースとの連携もGUIで設定可能
このように、設計・開発・テストの大部分を自動化・簡略化できるため、数日〜1週間程度で「とりあえず動く」プロトタイプが完成します。
例えば、顧客管理アプリや日報アプリなら、1〜2営業日で稼働可能です。これにより、PDCAサイクルも高速化し、現場の改善スピードを格段に高められます。
「業務の属人化」を即時アプリ化で解消
中小企業の現場でよくあるのが、「あの業務は○○さんしかやり方が分からない」という属人化です。これは、以下のような状況が原因です。
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Excelや紙ベースで業務が回っている
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手順が口頭やメールでしか共有されていない
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マクロやVBAで組まれており、ブラックボックス化している
こうした属人業務も、ローコード開発を使えば「そのまま業務アプリ化」できます。
例:Excel日報 → 業務アプリ化
Before(Excel) | After(ローコードアプリ) |
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手動でファイル送信 | 自動でクラウド保存・通知 |
入力ルールがバラバラ | 入力フォームで統一 |
担当者しかファイル場所を知らない | 一元管理で誰でも閲覧可能 |
試行錯誤・改善を前提としたアジャイル開発がしやすい
ローコード開発は「まず作って、使ってみて、改善する」というアジャイル開発に最適です。以下のような進め方が可能です。
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現場ヒアリングで最低限の要件を定義
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数日で動くアプリを構築
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実際の業務で運用してもらう
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フィードバックを受け、改善・拡張
このサイクルを短期間で回すことで、従来の「重厚長大なシステム開発」とは異なり、無駄な開発や失敗を回避できます。
また、改善のたびに開発会社に依頼する必要がなく、内製で柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
IT部門だけでなく業務部門も開発に参加できる
ローコードツールは、ノーコードに近いUI(ユーザーインターフェース)を持つものが多く、非エンジニアの業務担当者でも扱いやすいのが特徴です。
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ドラッグ&ドロップで画面作成
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入力項目の設定もGUIで簡単
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ボタンの挙動や通知設定もテンプレート化
これにより、業務部門の担当者が自らアプリを作成し、「現場目線の改善」を実現できます。IT部門の支援は必要ですが、開発の主体が業務側に移ることで、より使いやすいシステムに仕上がるのです。
現場の変化に柔軟に対応できる
中小企業の業務は、日々の運用改善や法制度の変更など、予測できない変化に直面します。こうした変化に迅速に対応するには、「柔軟な仕組み」が欠かせません。ローコード開発は、まさにこの“変化への即応性”に優れており、現場主導で改善を繰り返す運用スタイルに適しています。
業務の変化や法改正にも即対応
例えば、以下のような場面で、業務フローの変更が必要になることがあります。
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請求書の電子化義務化(インボイス制度対応)
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働き方改革による労働時間管理の変更
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社内ルールや商品ラインナップの更新
従来のシステムでは、これらの対応には数週間〜数ヶ月かかることも珍しくありません。しかしローコードであれば、次のような対応が即日可能です。
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入力フォームに新項目を追加
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承認フローの分岐条件を変更
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帳票出力レイアウトの調整
わずか数クリックで修正できるため、「今、必要な業務改善」を即時に形にできます。
「カスタマイズ性の高さ」で業務にぴったりフィット
多くの中小企業では、パッケージ製品のような「汎用システム」が自社業務に合わないという悩みを抱えています。実際、以下のような声はよく聞かれます。
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「余計な機能ばかりで、肝心な業務がやりづらい」
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「自社特有の業務フローに対応できない」
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「改修を依頼すると追加費用がかかる」
ローコード開発なら、こうした課題を解消できます。
カスタマイズできる主な要素 | 具体例 |
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入力項目の構成 | 必須・任意・初期値・選択肢の設定など |
ワークフロー | 承認ステップの分岐、条件ごとの処理変更 |
UIデザイン | 表示順やレイアウトの調整、色・文字サイズの変更 |
内製化で「ブラックボックス化」を回避
外部ベンダーにシステムを依頼すると、以下のような問題が起こることがあります。
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ソースコードや設定が不明で保守ができない
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担当者が退職・異動すると対応できない
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改修依頼のたびに費用と時間が発生
一方、ローコードツールを使って内製化すれば、設定や処理の構成がすべて「見える化」されているため、誰が見ても把握しやすいのが特長です。
特に以下の点が内製化によって改善されます。
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バグ発生時の原因特定が容易
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改修・機能追加を社内で実施可能
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ドキュメントレスでも構造が可視化されている
結果として、開発会社に頼らずとも「自分たちで改善できる体制=自走型IT」を実現できるのです。
現場の声をすぐに反映し、定着率も向上
ITシステム導入の失敗例として多いのが「現場に使われない」というケースです。これは、以下のような理由によるものです。
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操作が直感的でなく、現場の運用に合っていない
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改善要望を伝えても反映に時間がかかる
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説明書なしでは操作できない複雑さ
ローコード開発では、現場担当者のフィードバックをリアルタイムで反映できるため、「使えるシステム」になりやすいのです。
例えば以下のような対応が可能です。
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「このボタン、もっと目立たせてほしい」→ 色や大きさを変更
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「入力欄の並び順が直感的でない」→ ドラッグで並び替え
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「スマホでも使いたい」→ レスポンシブ表示に切替
このように、現場目線の改善が即時に反映できることで、自然と現場に浸透し、定着率も向上します。
クラウド対応でどこでも使える
テレワークの普及や多拠点展開の加速により、「どこからでもアクセスできる業務システム」は現代の中小企業にとって不可欠な存在となりました。ローコード開発ツールの多くはクラウド対応しており、柔軟な働き方とIT基盤の整備を両立できます。ここでは、クラウド対応ローコードツールの4つのメリットを詳しく解説します。
クラウドベースでテレワーク・外出先でも業務継続
従来の業務システムは社内ネットワークに依存しているケースが多く、「会社にいないと使えない」「VPNが不安定で使いにくい」といった悩みを持つ企業も少なくありません。
クラウド対応のローコードツールでは、以下のような利点があります。
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ブラウザだけで利用可能(インストール不要)
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端末・場所を問わずアクセス可能(在宅・出張・移動中もOK)
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複数人で同時に操作可能(リアルタイム同期)
たとえば営業担当者が出先でスマホから在庫状況を確認したり、在宅勤務の経理担当者が申請書を処理したりと、働く場所に縛られない業務遂行が実現します。
導入の初期コストが抑えられる
クラウド型ローコードツールは、初期投資を大幅に抑えられるのも大きな特徴です。
導入形式 | 必要なコスト |
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オンプレミス型(従来) | サーバー購入、構築費、保守契約 |
クラウド型 | 月額ライセンス費用のみ(数千円〜) |
また、多くのツールで「無料プラン」「トライアル期間」が用意されており、まずは少人数で始めてみてから本格導入することも可能です。
セキュリティやバックアップも安心
クラウドと聞くと「セキュリティが不安」という声もありますが、実は多くのクラウド型ローコードツールは、高度なセキュリティ対策を実装しています。
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通信の暗号化(SSL/TLS)
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アクセス権限の細かな設定(閲覧・編集・管理など)
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二段階認証やIP制限の導入
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自動バックアップ・災害復旧対応(DR)
たとえばMicrosoft AzureやAmazon Web Services(AWS)上で稼働しているサービスであれば、世界基準のセキュリティポリシーに準拠しているため、安心して業務データを扱えます。
また、データの消失リスクや人為的なミスにも強く、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。
他のクラウドサービスとも連携が容易
ローコードツールの多くは、API連携機能や外部連携機能を備えており、すでに導入済みのクラウドサービスとの連携が容易です。
連携先 | 活用例 |
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Google Workspace | スプレッドシートとの同期、Googleカレンダーと予定連携など |
Microsoft 365 | Teamsでの通知、Outlookとのタスク共有など |
Slack | チャット通知・ワークフロー連携 |
Dropbox / Boxなど | 書類保存、PDFの自動出力・格納など |
全社展開しやすく、DX推進の起点に
ローコード開発のもう一つの強みは、「小さく始めて大きく広げられる」点にあります。中小企業においては、限られたリソースの中で徐々にDXを進めていくことが現実的です。ローコードはそのスタートに最適であり、現場の小さな成功体験を全社に展開し、組織全体のDXを促す“起爆剤”となります。
部門単位から社内全体へスムーズに横展開
最初は特定部署だけで使い始めたアプリも、うまくいけば社内の他部門に展開しやすいのがローコードの魅力です。たとえば以下のような流れで展開できます。
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営業部門で顧客管理アプリを構築・運用開始
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成功事例を社内共有し、他部署からも関心が集まる
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同じ基盤を使って、経理部門や総務部門がアプリを再利用
こうして、部門間で共通の基盤を持ちながら、それぞれの業務に合ったアプリをスムーズに導入できるため、無理なく全社展開が進みます。
テンプレート活用で展開スピードが加速
ローコードツールには、あらかじめ用意された「業務テンプレート」が多数搭載されています。これにより、業務アプリの展開スピードはさらに加速します。
業務テンプレート例 | 活用シーン |
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顧客管理(CRM) | 営業部門での案件・顧客情報管理 |
日報・勤怠申請 | 総務・労務部門での日常業務効率化 |
在庫・資材管理 | 製造・物流部門の業務トレーサビリティ向上 |
問い合わせ管理 | カスタマーサポートでの一元対応 |
ナレッジ共有・業務標準化の基盤に
アプリを全社に展開することで、業務の標準化やナレッジ共有が自然と進みます。
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業務のやり方が統一される(属人化の排除)
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アプリに沿った運用マニュアルが整備される
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改善の履歴が蓄積される
たとえば営業部門での「訪問記録の入力アプリ」があれば、どの担当者がいつどこに訪問したかを全員で確認でき、営業ノウハウの共有にも役立ちます。
また、アプリで記録が残ることで「業務を言語化しやすくなり、教育や引き継ぎも効率化」されるという副次的なメリットもあります。
DX推進の第一歩として社内文化を変える
ローコード開発を社内に導入することは、単なる「ツール導入」ではありません。それは現場主導で業務を変革する文化の第一歩です。
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「現場で不便を感じたら、自分たちで改善していこう」
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「ITの知識がなくても、業務改善はできる」
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「小さな工夫が会社全体の生産性につながる」
こうした価値観を持つ社員が一人でも増えれば、自然と会社全体のDXは前進します。
ローコードは、現場にITの力を与える民主化ツールともいえる存在です。
まとめ:ローコードで実現する中小企業の「自走型DX」
本記事では、「ローコード開発とは何か」から始まり、中小企業にとってのメリット、実際の活用シーンまでを具体的にご紹介してきました。
おさらいすると、ローコード開発の主な利点は以下の通りです。
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開発スピードが速く、即効性がある
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業務の変化に柔軟に対応できる
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クラウド対応でどこでも使える・コストが低い
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全社展開しやすく、DXの起点になる
特に「自社で業務アプリを内製化したい」「まずは一つの業務から改善してみたい」という中小企業にとって、ローコードは“自走型DX”の強力な第一歩となります。
「ITに詳しくないから」「予算が少ないから」と諦める必要はありません。今では、誰でも使えるツールと豊富なテンプレートがそろっており、現場の声をすぐ形にできる環境が整っています。
御社でも、まずは小さな業務アプリから、ローコード開発を始めてみませんか?
ご興味のある方は、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。導入相談・デモ体験も随時受付中です。