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クラウドセキュリティ最新事情:ゼロトラストモデルと中小企業の実践ポイント

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はじめに:ゼロトラストが中小企業に求められる理由

近年、クラウドサービスの急速な普及やリモートワークの一般化により、企業のデータはオフィスの境界を越えて扱われるようになりました。その結果、従来の「社内ネットワークを安全な領域とみなし、外部を危険とする境界防御型セキュリティ」では、もはや十分な防御が難しくなっています。特に中小企業は、セキュリティ対策に割ける予算や人材が限られており、サイバー攻撃のターゲットにされやすい状況です。

ゼロトラストモデルは「何も信用しない」という前提で設計され、全てのアクセスを都度検証します。この新しいセキュリティモデルを適用することで、外部からの侵入だけでなく、内部不正やアカウント乗っ取りにも対応しやすくなります。本記事では、ゼロトラストの基本概念、構成要素、中小企業でも導入可能な低コストの実践方法、さらに成功事例までを分かりやすく解説します。

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なぜゼロトラストが今重要なのか

クラウド化の波が押し寄せる中、企業を狙うサイバー攻撃は年々高度化しています。従来型セキュリティでは防ぎきれない脅威が増え、業務停止や情報流出による損失が拡大しています。この章では、ゼロトラストの必要性を深く掘り下げます。

サイバー攻撃の高度化と中小企業の被害増加

ここ数年、ランサムウェア攻撃やフィッシング詐欺はより巧妙かつ標的型になり、中小企業も例外なく狙われるようになっています。
例えば、2024年には国内中小企業の約40%が何らかのサイバー攻撃を受け、そのうちの20%が業務停止や顧客情報流出といった深刻な被害を経験したとの報告もあります。特に「セキュリティ対策は大企業ほど厳重ではない」という思い込みから、中小企業は攻撃者にとって「入りやすい標的」と見られやすいのです。

従来型セキュリティでは、社内ネットワークを安全と仮定し、外部からのアクセスのみを防御する設計が主流でした。しかし、クラウドサービスやテレワークが普及した今、社内・社外の境界が曖昧になり、「内部ネットワークからの攻撃」や「正規ユーザーを装った攻撃」が増えています。こうした状況を打破するために、ゼロトラストのように「常に信頼しない」モデルが注目されています。

クラウド利用拡大によるセキュリティ課題

クラウドサービス(SaaS)の利用は年々増加し、Google WorkspaceやMicrosoft 365など、業務に不可欠なツールは社外からアクセスされるのが当たり前になっています。しかし、これらの便利さと引き換えに、従来の境界型セキュリティは機能不全に陥りやすくなります。

従来型セキュリティとゼロトラストの比較例

項目 境界防御型セキュリティ ゼロトラストモデル
信頼の前提 社内ネットワークは安全 すべての通信を都度検証
アクセス制御 VPN経由での一括制御 ID・端末ごとの厳格な検証
攻撃検知 外部侵入の防御が中心 内部脅威や権限乱用も監視
柔軟性 リモートワーク対応に弱い クラウド・モバイル環境に強い

ゼロトラストの注目度が急上昇している背景

ゼロトラストの概念は2010年代から存在しましたが、ここ数年で一気に注目度が高まりました。その背景には、以下のような要因があります。

  • 政府・大手企業の導入事例:米国政府は2021年にゼロトラストを公式方針に採用し、各国企業に波及しました。

  • クラウドファーストの潮流:DX推進やクラウド利用増加が、ゼロトラスト導入を後押し。

  • セキュリティ人材不足:自動化と可視化を強化できるゼロトラストが、中小企業にとっても現実的な選択肢となりつつあります。

こうした背景から、日本国内でもゼロトラスト導入事例が増加し、クラウドベンダーやセキュリティベンダーが提供するサービスの多くにゼロトラスト要素が組み込まれています。

ゼロトラストの基本概念と構成要素

ゼロトラストは単なる製品やソリューション名ではなく、複数の技術やポリシーを組み合わせたセキュリティモデルです。この章では、その基本概念と重要な構成要素を解説します。

ゼロトラストの定義と「信頼しない」考え方

ゼロトラストとは「社内外問わず全てのアクセスを信頼しない」という前提に基づき、都度ユーザーや端末の認証・検証を行うモデルです。例えば、社内の社員であっても、未認証の端末からアクセスする場合は必ず再認証や追加のセキュリティチェックが必要になります。

その考え方は次の3つに集約されます。

  1. 常に検証する(Verify Always):アクセスの度に認証と承認を行う。

  2. 権限を最小化する(Least Privilege):必要最小限のリソースのみアクセス許可。

  3. 侵入を前提にする(Assume Breach):防御だけでなく、侵入後の被害最小化も考慮。

アクセス制御と多要素認証(MFA)の役割

ゼロトラストの中核となるのがアクセス制御です。特に 多要素認証(MFA) は、中小企業でも導入しやすく、効果が高い対策の一つです。
MFAは、パスワードだけでなくワンタイムパスコードやスマートフォンの生体認証など、複数の認証要素を組み合わせることで不正アクセスを防ぎます。

MFA導入のメリット

  • 不正ログイン防止:パスワード漏えいがあっても、追加認証がなければ突破されにくい。

  • クラウドサービスの安全利用:Google WorkspaceやMicrosoft 365など、標準機能としてMFAが搭載されていることが多く、すぐに導入可能。

  • 低コスト導入:既存サービスの設定を有効化するだけで運用可能な場合が多い。

また、SSO(シングルサインオン)と組み合わせることで、複数のクラウドサービスへのログインを1回で済ませながら、認証強度を高めることが可能です。

セグメンテーションとマイクロペリメータ

従来のネットワークは「社内LAN=安全」とされ、全員が同じ領域にアクセスできる構造が一般的でした。ゼロトラストでは、これを「マイクロセグメンテーション」という考え方で細分化します。

マイクロセグメンテーションの特徴

  • ネットワークを複数の小さなセグメントに分割し、セグメントごとにアクセスルールを適用。

  • 攻撃者が1つのセグメントに侵入しても、他の領域には簡単に移動できない構造にする。

  • 仮想化環境(VMware NSXなど)やクラウドファイアウォールを活用すれば、中小企業でも比較的安価に導入可能。

この仕組みは、社内システムとクラウドを併用するハイブリッド環境で特に有効であり、ランサムウェアの横展開を防ぐ防波堤として機能します。

可視化とログ管理の重要性

ゼロトラストを成功させるためには、誰がいつどのシステムにアクセスしたかを把握する 可視化 が不可欠です。
ログを分析することで不審な挙動を早期発見でき、インシデント対応の迅速化にもつながります。

中小企業向けにおすすめの可視化・ログ管理ツールには以下があります。

ツール 特徴 費用感
Microsoft Sentinel クラウドベースのSIEM、Microsoft 365と連携 月額数万円~
Splunk Free版 無料枠で小規模利用可能 0円(条件付き)
AWS CloudTrail AWS環境でのアクセス監査用 利用量課金

中小企業が取り入れるためのセキュリティ強化策

ゼロトラストは大企業専用の高度なセキュリティモデルと思われがちですが、実は中小企業こそ段階的導入に適しています。この章では、コストを抑えつつ実践できる施策を紹介します。

低コストで実現できるゼロトラストの第一歩

中小企業がいきなり全社的なゼロトラスト化を目指すのは非現実的です。まずは以下の「ミニマムステップ」で始めましょう。

  1. MFAの導入:既存クラウドサービスで無料設定可能な場合が多い。

  2. ID管理の一元化:SSOを使い、アカウント管理を効率化。

  3. VPNのアクセス権見直し:必要最低限の権限に制限。

  4. ログ収集の有効化:Microsoft 365やGoogle Workspaceでログ機能をON。

導入コスト例(イメージ)

項目 初期コスト 月額コスト
MFA設定 0円(設定のみ) 0円
SSO導入(Oktaなど) 5万円程度 1,000~2,000円/ユーザー
ログ管理(クラウド機能) 0円~ サービス利用料に含まれる

社員教育とセキュリティポリシーの整備

どれほどシステムを強化しても、社員の意識が低いとセキュリティリスクは残ります。
中小企業では以下の教育・ルール整備が有効です。

  • 月1回の簡易セキュリティ研修(フィッシングメールの判別演習など)

  • パスワードポリシーの徹底(複雑なパスワード+定期更新)

  • BYOD(私物端末利用)の規約整備

例えば、経理担当者が受け取った「請求書を装うメール」を開かずに済むかどうかは、教育次第です。短時間の教育でも被害を大幅に減らせます。

クラウド型セキュリティサービスの活用

中小企業におすすめなのが SASE(Secure Access Service Edge)CASB(Cloud Access Security Broker) といったクラウド型セキュリティサービスです。
これらを利用すると、社内に大規模な機器を導入せずとも、クラウド経由で最新のセキュリティ機能を享受できます。

主なサービス例

  • Zscaler:ゼロトラスト型アクセス制御

  • Netskope:クラウド利用可視化・データ保護

  • Microsoft Defender for Cloud Apps:CASB機能付きの統合型対策

これらは月額課金型で利用できるため、初期コストを抑えつつ導入可能です。

専門ベンダーとの連携で安心感を高める

自社で全てを構築・運用するのは難しいため、専門ベンダーとの協力がカギとなります。
特に クラウドセキュリティを熟知したSIerやMSP とパートナーを組むことで、
「導入設計~運用保守」までをワンストップで依頼でき、人的負担を軽減できます。

低コストで始めるゼロトラスト導入例

この章では、実際の導入事例を通してゼロトラストの現実的なアプローチを紹介します。 

Google WorkspaceやMicrosoft 365を活用した事例

例えば、ある製造業の中小企業では、Microsoft 365のMFAと条件付きアクセス(IP制限)を組み合わせることで、
ゼロトラスト的なセキュリティを低コストで実現しました。
「まずは既存サービスの設定を見直すだけで、セキュリティが2~3段階アップする」 というのが、この事例のポイントです。

VPNからゼロトラストアクセス(ZTNA)への移行

VPNはリモートアクセスで長く利用されてきましたが、脆弱性が指摘されています。
ZTNA(Zero Trust Network Access)は、ユーザーやデバイスごとに厳格な検証を行い、
VPNより柔軟かつ安全なリモートアクセスを可能にします。

移行ステップ例

  1. 既存VPN利用者のアクセスログを分析

  2. ZTNAの試験導入(小規模グループでテスト)

  3. 全社への段階的切り替え

中小企業の成功事例:導入コストと成果

実際にゼロトラストを部分導入した小売業のA社では、
導入コストは約30万円(MFA+ログ監視ツール) で済み、
従業員のパスワード漏えいリスクを大幅に低減しました。
結果として「取引先からの信頼性が向上し、商談数が増えた」という副次効果も報告されています。

まとめ:ゼロトラストモデルを段階的に取り入れる

ゼロトラストは、大企業だけでなく中小企業にも現実的なセキュリティ強化策です。
ポイントは、「いきなり完璧を目指さず、小さく始める」 ことです。
まずはMFAやID管理、ログ可視化など、無料または低コストでできる施策を実行し、
必要に応じてSASEやCASB、ZTNAへと拡張していくのが理想的です。

本記事を参考に、自社のセキュリティ体制を見直し、段階的なゼロトラスト導入を検討してみてください。
「何から始めればいいか分からない」という方は、専門ベンダーへの相談や問い合わせフォームの活用が近道です。

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