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Mattermost活用術:業務フローを効率化するチャンネル設計と運用ルール

はじめに:Mattermostによる業務効率化の可能性
「メールのやり取りが多すぎて重要な情報を見落としてしまう」「チーム全体での進捗共有に時間がかかる」といった課題を抱える中小企業は少なくありません。特に、複数の部門が並行して業務を進める中では、情報の分散やコミュニケーション不足が原因で非効率なフローが生まれやすくなります。こうした課題を解決するために注目されているのが、オープンソースのビジネスチャットツール Mattermost です。
Mattermostは、高いセキュリティ性と柔軟なカスタマイズ性が特長で、社内サーバーに構築できるため機密情報を扱う企業でも安心して利用できます。本記事では、Mattermostを導入した中小企業が 「業務フローを効率化するチャンネル設計」 と 「運用ルール」 をどう整備すれば成果を出せるのかを具体的に解説します。
本記事を読むことで、以下のようなメリットを得られます。
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Mattermostの効果的なチャンネル設計のコツが分かる
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タスク管理や進捗共有を効率化するルール作りの事例が学べる
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導入を成功させるための定着化の秘訣が理解できる
「メールや口頭連絡から卒業し、スピーディかつ効率的な業務フローを実現したい」と考えている中小企業の担当者にとって、実用的なヒントを得られる内容となっています。
チャンネル設計の基本と業務効率への影響
Mattermostのチャンネルは、組織内での情報共有を効率化するための“仮想会議室”のようなものです。適切なチャンネル設計を行うことで、業務情報が整理され、誰もが必要な情報にすぐアクセスできる環境が構築されます。逆に、チャンネルが乱立したり、目的が曖昧だったりすると情報が分散し、かえって業務の非効率化を招きます。
ここでは、チャンネルの役割・設計のベストプラクティス・情報共有の効率化の工夫について詳しく解説します。
チャンネルの役割と分類方法
Mattermostのチャンネルは、業務の「情報ハブ」として重要な役割を担います。メールのように受信者ごとに情報が分断されることがなく、必要なメンバー全員が同じ情報をリアルタイムで共有できます。
効果的に活用するためには、以下の3つの分類方法を取り入れると良いでしょう。
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プロジェクト別チャンネル
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例:#proj-新製品開発、#proj-展示会準備
特定のプロジェクトに関わるメンバーのみを集めることで、関連する議論・ファイル・決定事項を1つの場所に集約できます。
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部門別チャンネル
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例:#sales、#development
各部署で日常的な情報交換やナレッジ共有を行う場を作ることで、部門ごとの業務効率を上げられます。
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目的別チャンネル
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例:#qa(質問用)、#announcement(重要告知用)
用途を明確化することで、チャンネルごとの情報の流れがスムーズになります。
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ポイント: チャンネル名には英数字と短いキーワードを使い、誰が見ても一目で用途が分かるようにしましょう。
チャンネル設計のベストプラクティス
チャンネルを多く作りすぎると「どこに投稿すれば良いか分からない」という混乱を招きます。そのため、必要最小限のチャンネルを設計することが重要です。例えば、初期構築時は以下の4種類だけに絞るのがおすすめです。
チャンネル名 | 用途 | メンバー例 |
---|---|---|
#general | 全社向けお知らせ・告知 | 全社員 |
#random | 雑談・フリーコミュニケーション | 全社員 |
#proj-◯◯ | プロジェクト関連の議論 | プロジェクトメンバー |
#dept-◯◯ | 部門ごとの日常業務共有 | 部署メンバー |
非効率な情報共有を防ぐ工夫
メールや口頭での情報共有が残っていると、Mattermostを導入しても「結局どこを見れば良いのか分からない」という問題が生じます。
これを防ぐために、以下のルールを社内で定めましょう。
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業務連絡はMattermostを基本とする
(メールは外部取引先とのみ使用) -
重要情報は必ずピン留めする
チャンネル上部に固定することで、必要な情報が埋もれません。 -
会議の議事録や決定事項は専用チャンネルに集約
過去の履歴を誰でも簡単に追跡できます。
こうした仕組みを整えることで、Mattermostは「情報が流れるだけのチャット」から「業務基盤」として機能するようになります。
タスク管理・情報共有に強い運用ルール例
Mattermostを活用する上で、タスク管理や情報共有を効率化するための運用ルールを整えることは欠かせません。
例えば、「誰がどのタスクを担当しているのか」「進捗状況はどうなっているのか」を、チャットの流れの中でスムーズに把握できれば、メールやスプレッドシートを行き来する手間を大幅に削減できます。
以下では、ピン留め・ハッシュタグの活用法、自動化機能、検索性の向上策について解説します。
タスク管理に役立つピン留め・ハッシュタグ機能
Mattermostの「ピン留め」機能は、タスク管理に非常に便利です。例えば、会議で決まったアクションアイテムをチャンネルに投稿し、それをピン留めしておけば、後から見返す際に探しやすくなります。
また、タスクごとに「#タスク名」や「#優先度高」などのハッシュタグを付けて投稿することで、検索機能を活用して関連メッセージを一括で抽出できます。
具体的な利用例:
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投稿例: 「#優先度高 8月展示会のブースデザイン案、8/5までにレビューお願いします」
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検索例: 「#優先度高」で検索すれば、すぐに優先タスクを把握可能。
メリット:
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情報が流れない:重要メッセージをピン留めで固定
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進捗確認が簡単:ハッシュタグでタスクを分類
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可視化が進む:タスク一覧がチャット上で把握可能
定期報告や進捗管理の自動化
Mattermostにはボットやリマインダー機能が搭載されており、定期的な報告や進捗確認を自動化できます。これにより、担当者が毎回手動でリマインドする必要がなくなり、業務効率が向上します。
具体的な活用例:
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毎週月曜朝に進捗報告を促すボット
例:/remind @チーム "週次進捗報告をお願いします" every Monday 9:00
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期限前のリマインダー設定
タスクの締め切り2日前に通知を自動送信し、タスク漏れを防ぐ。
メリット:
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人的な確認作業が減り、担当者の負担が軽減
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進捗状況をチーム全員がリアルタイムで把握可能
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会議やチャットでの「催促」が不要になり、円滑な業務フローを実現
ポイント: 自動化する際は、必要以上に通知を多くせず、適切な頻度とタイミングを見極めることが重要です。
ファイル共有・検索性を高める工夫
Mattermostにはファイル共有機能が備わっていますが、無計画にファイルをアップロードすると、必要な資料が埋もれやすくなります。効率的に運用するためには、タグ付けや命名規則の統一が欠かせません。
具体的な運用ルール例:
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ファイル名に「日付」「プロジェクト名」「版数」を入れる
例:2025-07-展示会パンフ-v2.pdf
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重要ファイルはチャンネルのピン留めに固定
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Google DriveやDropboxと連携し、最新ファイルを常に同期
さらに、Mattermostの検索機能をフル活用するためには、投稿時に適切なキーワードやハッシュタグを使うことが効果的です。
「#会議資料」「#議事録」などのタグを付ければ、過去資料を一発で見つけられます。
社内文化に合わせたカスタマイズ事例
Mattermostはオープンソースであるため、カスタマイズ性が非常に高いのが特徴です。中小企業の現場では、社内文化や業務フローに合わせた柔軟な設定が導入成功の鍵となります。
ここでは、部門ごとの通知設定、絵文字リアクションの活用、外部ツール連携といった事例を紹介します。
部門別の使い方とカスタム通知設定
部署ごとに異なる業務スタイルがあるため、Mattermostの通知設定も部門ごとに最適化することが重要です。
例えば、営業部門では即時の顧客情報共有が必要なため、スマホ通知を強めに設定します。一方、開発部門は集中作業が多いため、特定チャンネルの通知だけを受け取るカスタマイズが有効です。
通知設定の例:
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営業チーム:
すべてのメッセージ通知ON(モバイルプッシュ)
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開発チーム:
@メンション・キーワード通知のみ
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管理部門:
日次・週次レポートをまとめて通知
絵文字リアクションやワークフローの統一
Mattermostでは絵文字リアクションを使うことで、コミュニケーションのレスポンスが迅速になります。
例えば、「👍=承認」「👀=確認済」といった社内ルールを決めておくと、いちいち文章で返信しなくても意思疎通が可能です。
メリット:
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確認・承認の手間が減る
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メッセージがシンプルになり、可読性向上
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チームの一体感が生まれる
外部連携ツールの活用例
Mattermostは、GitHub、Jira、Google Drive、Zoomなど、さまざまな外部サービスと連携できます。これにより、チャット内でほぼ全ての業務を完結させることが可能です。
例:
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GitHubとの連携:プルリクエストやコミット情報を自動通知
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Google Drive連携:ファイル更新情報をリアルタイム共有
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Zoom連携:チャットからワンクリックでオンライン会議を開始
定着化を進めるための活用Tips
Mattermostを導入しただけでは、すぐに現場の業務が改善されるわけではありません。多くの中小企業が直面する課題は、「せっかく導入したツールが活用されず、結局元のやり方に戻ってしまう」という状況です。そこで重要になるのが、社内での定着化を促進するための工夫や仕組みづくりです。
以下では、マニュアル整備、小さな成功事例の共有、定期的な見直しの3つのポイントを解説します。
社内マニュアル・利用ルールの整備
Mattermostはシンプルで直感的な操作が可能ですが、導入初期の段階では「どこに投稿すればいいのか」「通知設定はどうするのか」といった初歩的な疑問が頻出します。これを防ぐために、社内向けマニュアルや利用ルールを事前に用意しておくことが大切です。
具体的なマニュアル例:
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チャンネル一覧と用途説明
「#generalは全社告知用」「#proj-〇〇は開発関連」などのルール明記 -
投稿マナーや記載フォーマット
「要件は簡潔に」「議題・期限を明確に」など -
通知設定のガイド
初期設定から自分に合った通知に変更する手順
さらに、操作画面のスクリーンショットを添えることで、初心者にも理解しやすいマニュアルを作成できます。
小さな成功体験を共有する
ツールの定着には、現場でのポジティブな体験の共有が不可欠です。例えば、「会議時間が30分短縮できた」「タスク漏れがゼロになった」といった小さな成果を、チャンネルや社内報で発信しましょう。
具体的な共有方法:
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月次で成功事例を発表する会を開催
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社内チャットで「成功体験」専用チャンネルを作成
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現場の声を経営層に報告し、社内で表彰
こうした取り組みにより、「このツールを使えば業務が楽になる」という意識が浸透し、積極的な利用が進みます。
定期的な運用見直し
導入直後に設定したチャンネル構造やルールも、半年〜1年経つと現場の業務フローに合わなくなることがあります。そこで、半年に1回の運用レビューを行うことをおすすめします。
見直しの観点:
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使用されていないチャンネルは削除・統合
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新たなプロジェクトに合わせたチャンネル追加
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通知設定やルールが現場にフィットしているかの確認
定期的な見直しを行うことで、Mattermostの運用が現場に最適化され続ける状態を維持できます。
まとめ:Mattermost活用で業務効率を最大化
本記事では、Mattermostを活用して業務フローを効率化するための チャンネル設計と運用ルールのポイント を解説しました。
特に、
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プロジェクト・部門・目的別のチャンネル設計
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ピン留め・ハッシュタグ・自動化機能を活用した運用ルール
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社内文化に合わせたカスタマイズと定着化の工夫
といった要素を取り入れることで、メール中心の非効率な業務スタイルから脱却し、よりスピーディで透明性の高い情報共有が実現できます。
次のアクションとして、まずは小規模なプロジェクトからMattermostを試し、効果を確認した上で全社展開することをおすすめします。もし導入やカスタマイズに不安がある場合は、当社への問い合わせや相談フォームからお気軽にご相談ください。
Mattermostを最大限に活用し、業務効率を飛躍的に向上させましょう。
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