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"会話"を企業資産に変える。Mattermostで始める次世代の情報共有

Mattermost(マターモスト)とは、オープンソースで開発されているチームコミュニケーション基盤で、チャットによるやり取りを自社サーバーやプライベートクラウド上で運用できる点が特徴です。 メール・会議・個人間チャットに分散しがちな業務情報を一つの基盤に集約し、検索可能な形で蓄積できるようにすることで、意思決定のスピードや組織のナレッジ活用力を高める効果が期待できます。 この記事では、情報共有の分散が引き起こす経営課題を整理したうえで、Mattermostが解決に寄与できる点、データ主権の観点から自社でチャット基盤を持つ意味、導入によって期待できる効果、そして全社導入で失敗しないための運用ルールまでを、中堅企業の実務担当者・意思決定者の視点で解説します。
1. メール・会議・個人チャットに分散する情報が生む経営課題
多くの企業では、業務上のやり取りがメール、会議(対面・オンライン)、個人間のチャットアプリ、口頭での申し送りなど、複数の手段に分散しています。それぞれの手段自体は便利であっても、情報の置き場所がバラバラになることで、組織全体としては次のような課題が生まれます。
たとえば、次のような状況に心当たりのある方は少なくないはずです。
- 「あの件、どこかで話した気がするが、誰とのメールだったか思い出せない」
- 担当者が休職・退職すると、その人だけが把握していた経緯や判断理由が分からなくなる
- 同じ質問に対して、部署によって異なる回答をしてしまい、社外の相手を混乱させる
- 会議で決まったはずのことが、議事録が共有されておらず、後で「言った・言わない」になる
これらは一つひとつは小さな非効率に見えますが、積み重なると意思決定のスピードを落とし、属人化を進行させ、最終的には機会損失やコンプライアンス上のリスク(情報の所在や経緯を説明できない状態)にもつながります。情報共有の分散は、単なる「使いにくさ」ではなく、経営課題として捉える必要がある問題です。
特に注意したいのは、こうした状態が放置されたまま組織の規模が大きくなっていくケースです。人数や拠点が少ないうちは、多少情報が分散していても、関係者同士の顔が見える範囲で何とかカバーできてしまいます。しかし、部門が増え、担当者が入れ替わり、取引先とのやり取りが複雑になっていくと、「誰が何を知っているか」を把握すること自体が難しくなり、後から仕組みを整えようとしても、すでに大量の情報が個人のメールボックスやローカルのメモに散在してしまっている、という状況に陥りがちです。情報共有の一元化は、組織が小さいうちに着手した方が移行の負担が小さくて済む、という点も実務上のポイントです。
2. 業務コミュニケーション基盤が組織力を左右する時代へ
リモートワークやハイブリッドワークが定着したことで、対面での「ちょっと聞く」「隣の席で相談する」という情報共有の機会は大きく減りました。その一方で、部門をまたいだ連携や、拠点間・取引先を含めた情報のやり取りは複雑さを増しています。
この結果、業務コミュニケーション基盤は、単に「雑談や連絡をするための道具」ではなく、意思決定とナレッジ蓄積を支える経営インフラとしての性格を強めています。どのようなコミュニケーション基盤を選び、どう運用するかが、組織のスピードと情報活用力を左右する時代になってきていると言えます。
経営層の視点から見ると、コミュニケーション基盤への投資は、単なるITコストではなく、意思決定の速度や社員一人ひとりの生産性に直結する投資として捉える必要があります。情シス部門の視点から見ると、複数のチャットツールやファイル共有サービスが乱立している状態は、セキュリティ管理やアカウント管理の対象が増えることを意味し、統制の負荷が高まります。非IT部門の担当者にとっても、「どこを見れば必要な情報にたどり着けるか」が明確であることは、日々の業務効率に直結します。立場によって重視する観点は異なりますが、いずれの立場からも、コミュニケーション基盤の整理は後回しにしにくいテーマになってきています。
特に中堅企業においては、情報システム部門の人員が限られている一方で、事業拡大に伴い部門・拠点数が増えていくケースが多く見られます。この段階で情報共有の仕組みを整理しておくかどうかが、その後の組織運営のしやすさに大きく影響します。
また、コミュニケーション基盤の選定は、一度導入すると数年単位で使い続けることが多く、後から乗り換えるにはデータ移行や利用者教育のコストがかかります。そのため、目先の使いやすさだけでなく、「自社の情報をどこに、どのような形で残していきたいか」という中長期的な視点から選定することが重要になります。ここで比較検討の対象となるツールの一つが、次章で紹介するMattermostです。
3. Mattermostが実現する情報共有の一元化
Mattermostとは、チャンネルベースのチャット機能を中心に、ファイル共有、検索、外部ツール連携、簡易的なワークフロー自動化などを備えたチームコミュニケーション基盤です。見た目や基本的な使い勝手はSlackなど他のビジネスチャットツールに近く、チャンネル単位で会話を整理し、後から検索して参照できる点が特徴です。
情報共有の一元化という観点では、Mattermostは次のような使い方ができます。
- 案件・プロジェクトごとにチャンネルを作り、関連するやり取りをそこに集約する
- 過去の会話やファイルをキーワード検索で呼び出し、経緯を後から追跡できるようにする
- 外部の開発ツールや業務システムからの通知をチャンネルに集約し、確認先を一本化する
- 定型的な問い合わせ対応や承認フローを、簡易的な自動化機能で一部効率化する
また、Mattermostはオープンソースであることを活かし、社内で利用しているシステムと連携させるためのプラグインやWebhook(外部システムからの通知を受け取る仕組み)を独自に開発・追加できる点も特徴です。既製のSaaSサービスでは対応していない自社独自の業務フローがある場合、こうした拡張性が有効に働くことがあります。ただし、拡張機能の開発・保守にはある程度の技術的なリソースが必要になるため、標準機能だけで十分な範囲から始め、必要に応じて拡張していくという段階的なアプローチが現実的です。
一方で、Mattermost自体は万能ではありません。既存のメールや会議をすべて置き換える必要はなく、「検索可能な形で残すべき情報」をどこに集約するかという設計判断が伴います。ツールを導入するだけで自動的に情報共有が一元化されるわけではない、という点は正直に押さえておく必要があります。
なお、ビジネスチャットの領域には、Mattermost以外にもSlackやMicrosoft Teamsなど、広く使われているSaaS型のサービスがあります。これらは導入のしやすさや外部サービスとの連携の豊富さに強みがあり、多くの企業にとって有力な選択肢です。Mattermostがこれらと比較して独自の位置づけを持つのは、次章で説明する「セルフホスト型でデータ主権を確保できる」という点にあります。どちらが自社に適しているかは、この後の観点も踏まえて判断することをおすすめします。
4. データ主権を守るために、チャット基盤を自社で持つという考え方
データ主権(データソブリンティ)とは、自社の業務データがどこに、どのような管理下で保存されているかを、自社自身がコントロールできる状態を指す考え方です。クラウド型のSaaSサービスの多くは、提供事業者のサーバー(多くの場合、海外を含む複数のデータセンター)にデータが保存される仕組みになっています。利便性は高い一方で、データの保存場所や管理権限の一部を事業者側に委ねることになります。
Mattermostは、SaaS版だけでなく、自社のサーバーやプライベートクラウド上に構築するセルフホスト型の運用が可能な点が特徴です。セルフホスト型を選ぶことで、次のような点をコントロールしやすくなります。
- データの保存場所を自社が管理するインフラ内に限定できる
- 社内のセキュリティポリシーやアクセス権限の設計を、自社の基準に合わせて構築できる
- 外部ネットワークとの接続範囲を、自社の判断で制御できる
特に、金融・医療・官公庁関連の業務や、取引先の機密情報を扱う製造業などでは、情報の保存場所や管理体制について社内規程や取引先からの要求があるケースが多く、セルフホスト型でチャット基盤を持つという選択肢が現実的な検討対象になります。
ただし、セルフホスト型には注意点もあります。サーバーの構築・保守、セキュリティアップデートの適用、バックアップ体制の整備などは自社(または委託先)で担う必要があり、SaaS版に比べて運用の手間とそれに伴うコストが発生します。「データ主権を確保したいが、運用リソースは限られている」という場合は、クラウド事業者が提供するマネージド型のホスティングを選ぶなど、段階的な選択肢も検討する価値があります。
データ主権の確保が必要かどうかは、業種や取り扱う情報の性質によって一概には言えません。個人情報や取引先の機密情報を多く扱う企業では優先度が高くなりやすい一方、そうした情報を扱う場面が限られる企業では、運用負荷の軽いSaaS型を選び、必要な範囲でアクセス権限や保存期間のルールを社内規程として整備する、という考え方でも十分に対応できる場合があります。自社の情報資産の性質を棚卸しすることが、判断の出発点になります。
5. Mattermost導入で期待できる効果
Mattermostに限らず、業務コミュニケーション基盤を整理・一元化することで期待できる効果は複数ありますが、ここでは代表的な4つの観点から整理します。なお、以下の効果の度合いは企業の業務内容や運用の徹底度によって異なり、導入すれば自動的に得られるものではない点にご留意ください。
意思決定の迅速化
関連するやり取りが一つのチャンネルに集約されていれば、判断に必要な情報を探す時間を減らせます。たとえば、ある製造業の企業(架空の例)で、受注案件ごとにチャンネルを分けて設計・営業・製造の担当者が同じ場所でやり取りするようにしたところ、確認のためのメールの往復が減り、承認までのリードタイム短縮につながったというようなケースが想定されます。承認者が出張や休暇で不在の場合も、チャンネル内の履歴を見れば代理の担当者が状況を把握しやすくなる点も、意思決定の停滞を防ぐうえで実務的な効果です。
ナレッジの蓄積
チャンネル内の会話や添付ファイルは検索可能な形で残るため、担当者の異動・退職があっても、経緯や判断理由をたどりやすくなります。属人化の解消は一朝一夕には進みませんが、「まずは検索できる状態を作る」ことが第一歩になります。過去のトラブル対応や顧客からの要望をチャンネルに残しておけば、似たような問い合わせが再び発生した際に、ゼロから調べ直す手間を省けるようになります。
部門間連携の強化
部門をまたいだプロジェクトでは、関係者を横断的にチャンネルへ招待することで、都度メールで関係者を確認する手間を減らせます。特に、拠点や部門が増えてきた中堅企業では、情報の所在を一本化することで、連携における認識のずれを減らす効果が見込めます。営業が把握している顧客の要望と、開発・製造側が把握している仕様上の制約が、同じチャンネル上で共有されることで、後工程での手戻りを減らすことにもつながります。
運用コストの最適化
複数の連絡手段(メール、複数のチャットツール、掲示板など)が併存している状態を整理し、コミュニケーション基盤を集約することで、ライセンス費用やツールの管理工数を抑えられる場合があります。ただし、セルフホスト型を選ぶ場合はサーバー運用コストが発生するため、既存ツールの利用料とサーバー運用・保守コストを比較したうえで、総合的な費用対効果を判断することが重要です。単純なツール利用料の比較だけでなく、情報が探しやすくなることによる社員一人ひとりの作業時間の削減効果も含めて評価すると、実態に近い費用対効果が見えてきます。
6. 全社導入で失敗しないための運用ルール
Mattermostに限らず、社内チャットツールの全社導入では、ツールの機能そのものよりも運用ルールの設計が定着の成否を分けます。現場でよく見られる失敗パターンと、その対策を整理します。
よくある失敗パターン
- チャンネルが目的なく乱立し、どこに何を書けばよいか分からなくなる
- 通知設定のルールがなく、重要な連絡が埋もれてしまう
- 一部の部署だけで使われ、全社的な情報の一元化につながらない
- 導入初期の教育が不十分で、結局メールや口頭でのやり取りに戻ってしまう
最低限整えておきたい運用ルール
- チャンネルの命名規則と作成基準(案件用・部署用・全社用などの使い分け)を最初に決める
- 返信の目安時間や、緊急連絡には別手段を使うといった通知に関するルールを明文化する
- 使われなくなったチャンネルをアーカイブする運用(棚卸し)の担当と頻度を決めておく
- 導入初期は簡単な操作ガイドとオンボーディングの機会を設け、利用定着まで伴走する
- 定期的に利用状況(アクティブなチャンネル数、投稿の偏りなど)を確認し、形骸化の兆候を早期に把握する
加えて、既存のメールや会議をどこまでMattermost上のやり取りに置き換えるのか、あるいは併存させるのかという方針も、あらかじめ決めておくと混乱を防げます。「重要な意思決定はチャンネル上に記録を残す」「日常的な軽微な確認事項もチャンネルで行う」といった基準を、部署やプロジェクトの特性に応じて具体化しておくと、現場での判断のばらつきを抑えられます。
これらのルールは、導入前に情報システム部門だけで決めるのではなく、実際に利用する現場部門の意見も取り入れながら設計すると、定着しやすくなります。全社導入はツールの切り替えというより、業務コミュニケーションの習慣を変えるプロジェクトだと捉えることが、失敗を避けるうえでのポイントです。
たとえば、運用ルールを決めないまま全社展開した結果(架空のケース)、部署ごとに独自の使い方が広がり、ある部署では日報代わりに使われる一方、別の部署ではほとんど開かれない、という状態になってしまったという例も考えられます。こうした事態を避けるには、いきなり全社一斉導入をするのではなく、まずは1〜2部署でスモールスタートし、運用ルールの実効性を検証したうえで段階的に対象を広げていく進め方が現実的です。
7. Mattermostを企業の成長基盤にするために
情報共有の一元化は、Mattermostのようなオープンソース・セルフホスト型のチームコミュニケーション基盤に限った選択肢ではなく、SaaS型のビジネスチャットツールを含めて複数の選択肢があります。SaaS型は導入・運用の手軽さに強みがあり、Mattermostのようなセルフホスト型はデータ主権の確保やカスタマイズ性に強みがあります。自社にとってどちらが向いているかは、扱う情報の機密性、社内の運用体制、コストの許容度によって変わります。
一般的には、次のような企業でMattermostのようなセルフホスト型の基盤が検討対象になりやすいと言えます。
- 取引先や規制上の理由から、データの保存場所や管理体制に一定の要件がある企業
- 社内にサーバー運用や情報システムの一定のリソースがある、または委託先を確保できる企業
- 既存の業務システムと連携させ、通知やワークフローをある程度カスタマイズしたい企業
反対に、情報システム担当者が不在で運用リソースを割けない企業や、まずは低コスト・低負荷で情報共有を試したい企業にとっては、SaaS型のチャットツールから始める方が現実的な場合もあります。どちらを選ぶ場合であっても重要なのは、ツールの機能や価格だけで判断するのではなく、「自社が3〜5年後もその情報を検索・活用できる状態にしておきたいか」という視点で、保存場所と運用体制をあわせて検討することです。
情報共有基盤の見直しは、現状の課題を洗い出すところから始めても遅くありません。どの部署で、どのような情報のやり取りが分散し、どのような支障が出ているのかを棚卸しし、そのうえでMattermostのようなセルフホスト型の選択肢が自社に合うかどうかを検討していただくことをおすすめします。
"会話"は放っておけば流れて消えてしまいますが、検索可能な形で蓄積すれば、組織にとっての資産になります。まずは自社でどの情報を、どこまで一元化する必要があるのかを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。Mattermostの導入や、自社に合った情報共有基盤の選定について検討されている場合は、お気軽にお問い合わせください。
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