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クラウド移行を阻む「レガシー資産」の攻略法と段階的モダナイズ戦略

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はじめに:クラウド移行を阻む壁「レガシー資産」

「そろそろ自社システムもクラウドに移行したい」——そんな声は、多くの中小企業の経営者やIT担当者から聞かれるようになりました。クラウド化によって得られる効果は明らかで、柔軟な拡張性、運用コストの最適化、そしてセキュリティ強化といったメリットは、競争力を高める上で欠かせない要素です。

しかし、その一歩を踏み出す前に立ちはだかるのが「レガシー資産」です。古くから使い続けている業務システムや紙ベースのフロー、属人的に運用されているアプリケーションは、単なる古い仕組みにとどまらず、**クラウド移行やDXを阻む“見えない壁”**として存在しています。

実際、「システムが古すぎてクラウドに載せられない」「データが整理されていないため移行できない」といった声は、中小企業では決して珍しくありません。本記事では、こうしたレガシー資産の正体を解き明かし、捨てるべきものと活かすべきものの判断基準、さらに段階的にモダナイズを進めるための戦略をわかりやすく整理します。

クラウド移行を「夢」で終わらせず、確実に成果につなげるために——。中小企業の担当者が実践できる具体的なアプローチを、一緒に見ていきましょう。

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レガシー資産とは?DXを阻む「見えない壁」

クラウド移行を阻む要因としてまず理解しておきたいのが、そもそも「レガシー資産とは何か」という点です。この章では、レガシー資産の定義と種類、なぜ移行の妨げとなるのか、そして中小企業特有の課題について掘り下げていきます。

レガシー資産の定義と種類

レガシー資産とは、一言でいえば**「古いが、業務上使われ続けている仕組みやデータ」**のことを指します。
典型的な例は以下の通りです。

種類 具体例 問題点
古い業務システム 20年前に導入した基幹システム、独自開発の販売管理システム 技術者不足、クラウド非対応
紙・Excelベースの業務フロー 紙伝票での承認、Excelでの顧客リスト管理 属人化、データ重複、検索性の低さ
ブラックボックス化したアプリ 開発者が退職し仕様が不明なアプリ 改修困難、セキュリティリスク
古いハードウェア オンプレサーバー、古いPC端末 保守切れ、故障リスク

一見「まだ使えているから問題ない」と思いがちですが、これらはクラウドへの移行を阻む大きな要因になります。

なぜレガシー資産がクラウド移行を妨げるのか

クラウド移行が進まない理由の多くは、このレガシー資産に起因します。代表的な妨げの要因は以下の通りです。

  • 技術的制約:古いシステムが最新のクラウド基盤に対応していない。

  • コスト増加:改修や再構築が必要となり、想定以上の費用が発生する。

  • 人材不足:古い技術に精通した技術者がすでに社内にいない。

  • データ構造の複雑さ:整理されていないデータが移行を難しくする。

例えば、ある中小製造業では「20年前に導入した生産管理システムが現場業務に深く組み込まれており、システムを止められないために移行が進まない」という課題がありました。「止められないシステム」こそがクラウド移行の最大の壁なのです。

中小企業に特有のレガシー課題

大企業と比べて、中小企業には以下のような特徴的な課題があります。

  1. IT部門の規模が小さい

    • 専任担当者が1〜2人しかおらず、日常の運用で手一杯。モダナイズの検討に時間を割けない。

  2. 属人化

    • 「この業務は○○さんしか分からない」という状況が多発。システムや業務フローがブラックボックス化。

  3. 予算制約

    • 投資余力が限られており、抜本的なシステム刷新に踏み切れない。

  4. 外部ベンダー依存

    • ベンダーが提供した独自仕様に縛られ、自由なクラウド移行ができない。

これらの要因が重なり、「やりたいのに進められない」ジレンマが生じているのです。

レガシーを捨てる vs 活かすの判断基準

レガシー資産を前にしたとき、中小企業がまず直面するのは「残すべきか、それとも捨てるべきか」という選択です。無計画に全部を刷新するとコストとリスクが膨大になり、逆にすべてを温存するとクラウド移行の意味が薄れてしまいます。ここでは、システムを「リプレイス(廃止・刷新)」するか、「リファクタリング(改修・活用)」するかを判断する基準を整理します。

「リプレイスすべき」システムの特徴

リプレイスとは、既存システムを新しいものに置き換えることです。以下の条件に当てはまる場合は、リプレイスを強く検討すべきです。

  • 老朽化が著しい:導入から10年以上経過し、最新OSやクラウド環境に対応できない。

  • サポート切れ:メーカーや開発ベンダーのサポートが終了し、障害時のリスクが大きい。

  • セキュリティリスクが高い:暗号化やアクセス制御が不十分で、情報漏洩の危険がある。

  • 業務ニーズに合わない:業務フローの変更に対応できず、現場で“使いにくい”と感じられている。

例えば、Windows Server 2008 や古いERPを未だ利用している場合は、サポート終了により脆弱性が放置されるため、リプレイスは避けられません。「動いているから大丈夫」ではなく、「止まったら大損失になる」という視点が重要です。

「リファクタリング・活用すべき」資産の特徴

一方で、すべてを捨てる必要はありません。特に以下の条件に該当する資産は、改修して活かす方がコスト効率が高いケースもあります。

  • データ価値が高い:長年蓄積された顧客情報や販売履歴など、他に代替できないデータを含む。

  • 業務に不可欠:日常業務を支える重要システムで、止めると業務が混乱する。

  • 部分的な改修で改善可能:クラウド対応のモジュール追加やAPI連携で十分に活用できる。

具体例として、「販売管理システムのデータはそのまま残しつつ、レポート機能だけクラウドBIと連携させる」といった方法があります。これにより、既存資産を守りつつ新しい価値を生み出せるのです。

経営判断に役立つ評価軸

リプレイスかリファクタリングかを決めるには、以下の評価軸で比較するのが有効です。

評価軸 リプレイス リファクタリング
投資対効果(ROI) 初期投資は大きいが長期的には効率化効果が高い 投資は抑えられるが抜本的な効率化は限定的
リスク低減 サポート切れやセキュリティリスクを解消可能 一部リスクは残る
将来の拡張性 最新技術を取り入れやすい 古い技術との共存に制約あり
導入スピード 設計から時間がかかる 短期的に改善可能

例えば、経営会議で「今後5年間でのROIを試算した結果、初期投資はかかるがリプレイスの方が得策」と判断されるケースも多いです。逆に、資金に限りがある中小企業では「現行システムをリファクタリングしつつ、将来的に段階的リプレイスを計画する」折衷案も現実的です。

モダナイズに向けた段階的アプローチ

レガシー資産の取捨選択が済んだら、次のステップは実際のモダナイズの進め方です。中小企業がクラウド移行を成功させるには、「すべてを一気に刷新する」のではなく、段階的かつ計画的に進めるアプローチが欠かせません。この章では、現状把握からロードマップ策定、モダナイズ手法の選定、そして外部パートナーの活用までを整理します。

クラウド移行前の資産棚卸し

モダナイズの第一歩は、現状の資産を正確に把握することです。

「うちの会社はシステムが3つくらいだから、すぐ把握できる」と思われがちですが、実際に調べると以下のような“隠れレガシー”が見つかることが多いです。

  • 部署ごとにバラバラに導入されたExcelマクロ

  • 誰が管理しているかわからないAccessデータベース

  • 古いNASに眠る過去の顧客データ

  • 廃止したはずのアプリを一部社員が未だ利用

棚卸し作業のポイント

  1. システム・アプリ・データ・業務フローをすべて洗い出す

  2. 重要度・利用頻度・リスクレベルを分類する

  3. 現場担当者にヒアリングして実態を把握する

以下のような表にまとめると、全体像が可視化しやすくなります。

資産名 利用部門 重要度 問題点 移行候補
販売管理システム 営業部 OSサポート切れ リプレイス
勤怠管理Excel 総務部 集計に時間がかかる クラウドSaaS導入
顧客リストAccess 営業部 担当者退職で運用不可 データ移行

このプロセスを丁寧に行うことで、無駄なシステム投資や抜け漏れを防げます。

優先順位付けと移行ロードマップ

棚卸しで全体像が見えたら、次に必要なのは優先順位付けです。すべての資産を同時に移行するのは非現実的であり、費用もリスクも大きすぎます。

優先順位を決める際の基準は以下の通りです。

  • 緊急性:サポート終了やセキュリティリスクが差し迫っているか

  • 影響度:業務全体への影響が大きいか

  • 効果の大きさ:移行によって業務効率化やコスト削減が見込めるか

例えば、以下のようなロードマップを描くと実行性が高まります。

1年目:勤怠管理や経費精算などSaaS活用で移行が容易な領域を着手
2年目:基幹システムや販売管理など主要システムを段階的に刷新
3年目:残存するデータ資産を統合し、BIツールやAI活用に展開

このように**「小さな成功を積み上げる」アプローチ**が、中小企業にとって現実的で効果的です。

段階的モダナイズ手法の紹介

クラウド移行にはさまざまな手法があります。代表的なものを整理すると次の通りです。

手法 概要 特徴 適したケース
リホスト 既存システムをそのままクラウドへ移行(Lift & Shift) 移行が早いが根本的改善は少ない 急ぎの対応、短期的なコスト削減
リファクタリング 部分的にコードや構造を修正してクラウド対応 柔軟性・拡張性が増す 改修余地がある独自システム
リプレイス 新しいクラウドシステムに置き換え コストはかかるが抜本的改善 老朽化・サポート切れシステム

たとえば、古い会計ソフトをクラウドSaaSに「リプレイス」しつつ、販売管理システムは「リファクタリング」で延命するといった組み合わせ戦略も有効です。

外部パートナー活用のポイント

中小企業がモダナイズを進める際、外部パートナーの活用は不可欠です。

  • SIer(システムインテグレーター):既存資産の分析や移行計画の策定を支援

  • クラウドベンダー(AWS、Azure、Google Cloudなど):技術基盤やセキュリティの提供

  • 専門コンサルティング会社:経営視点でのROI評価や最適化提案

パートナー選定のポイントは以下の通りです。

  1. 中小企業支援の実績があるか

  2. 自社の業種・業務に理解があるか

  3. 移行後の運用サポートを提供してくれるか

「クラウドは導入して終わり」ではなく、導入後の安定運用こそが成功のカギです。外部パートナーをうまく巻き込み、社内リソースの不足を補いましょう。

成功企業の事例とその進め方

理論や方法論だけでなく、実際にクラウド移行やモダナイズを成功させた企業の事例を知ることは大変有効です。特に中小企業にとっては、「自分たちの規模でも実現できるのか」という視点が重要になります。ここでは、製造業とサービス業の事例を取り上げ、最後に中小企業が学ぶべき共通ポイントを整理します。

製造業における基幹システム刷新事例

ある中堅製造業では、20年以上稼働していた生産管理システムがありました。古いオンプレサーバー上で稼働していたため、以下の課題を抱えていました。

  • サポート切れによるセキュリティリスク

  • 部品在庫の管理精度が低く、欠品や過剰在庫が頻発

  • システム担当者が退職し、運用ノウハウが失われつつある

そこで同社は、段階的な移行戦略を採用しました。

  1. まず既存データベースをクラウド環境へリホスト(Lift & Shift)

  2. 在庫管理機能をリファクタリングし、最新のクラウドBIツールと連携

  3. 最終的に基幹システム全体をクラウドERPにリプレイス

この結果、在庫管理の精度が改善し、在庫コストを年間15%削減。また、工場長が「リアルタイムに在庫状況を把握できるのは画期的だ」とコメントするほど、現場の意思決定スピードも向上しました。

サービス業での業務効率化事例

中小規模の人材サービス会社では、Excelと紙で顧客管理や勤怠管理を行っていました。その結果、以下のような問題が発生していました。

  • 顧客情報の重複入力や更新漏れ

  • 勤怠申請の承認が紙ベースで遅延

  • 社員から「非効率でストレスが大きい」という不満

同社は、クラウドSaaSの導入を中心としたモダナイズを実施しました。

  • 顧客管理はCRM(Salesforceなど)を導入

  • 勤怠管理はクラウド勤怠システムに切り替え

  • 承認フローはワークフローシステムに統合

結果として、月末処理にかかる時間を50%短縮し、営業担当者が「入力に追われるのではなく、顧客対応に集中できるようになった」と効果を実感しました。

中小企業が学ぶべき共通ポイント

これらの事例から、中小企業が学ぶべき成功の共通ポイントを整理すると次の通りです。

  • 小さな成功から始める
    → いきなり大規模刷新ではなく、勤怠管理やCRMなど移行しやすい領域からスタートする。

  • 現場を巻き込む
    → 導入初期から現場担当者に意見を聞き、「使いにくい」と感じさせない工夫をする。

  • 経営層の意思決定
    → 投資判断を経営層がリーダーシップを持って行い、全社的なDXの流れを後押しする。

  • 外部パートナーを活用
    → 専門知識を持つSIerやクラウドベンダーを巻き込み、リソース不足を補う。

つまり、成功する中小企業は「無理のない範囲から始め、成功体験を積み上げる」ことで全社的なクラウド移行へとつなげているのです。

中小企業が注意すべき落とし穴

クラウド移行やレガシーモダナイズは大きなメリットをもたらしますが、進め方を誤ると逆効果になる場合もあります。特に中小企業に多いのは、「想定外のコスト増」「セキュリティ軽視」「現場の抵抗」といった落とし穴です。この章では、それぞれの典型的な失敗例と回避策を整理します。

移行コストの過小評価

「クラウドにすれば安くなる」という期待から移行を始める企業は少なくありません。しかし、実際には以下のようなコストが発生します。

  • 初期移行費用:データ移行、システム改修、テスト作業

  • 運用コスト:クラウド利用料、バックアップやセキュリティサービス費用

  • 教育コスト:新システムに慣れるための社員トレーニング

ある小売業の事例では、クラウド移行後に「毎月の利用料が想定以上に高く、オンプレ時代よりコストが膨らんだ」という声もありました。これは、アクセス数やデータ容量の増加を見誤ったことが原因です。

回避策

  • TCO(総保有コスト)で比較:初期費用+5年分の運用費を合算して検討

  • スモールスタート:まずは一部業務のみ移行し、コストを検証

  • 利用状況のモニタリング:定期的に利用量を可視化し、不要なリソースを削減

セキュリティ・コンプライアンスの盲点

クラウドサービスは一般的にセキュリティレベルが高いものの、利用側の管理不足が原因で事故が発生するケースは多々あります。

  • アクセス権限を適切に設定せず、全社員が重要データを閲覧できる状態になっていた

  • 個人情報保護法や業界規制に対応していないクラウドサービスを安易に利用

  • バックアップの設定を怠り、データ消失時に復旧できなかった

例えば、医療機関で「クラウド上に保存した患者データが意図せず共有されてしまった」という事故も報告されています。

回避策

  • 最小権限の原則を守り、アクセス権限を厳格に管理

  • 利用サービスのコンプライアンス適合性を事前にチェック

  • 多重バックアップを取り、障害や誤操作に備える

現場の抵抗感と変革マネジメント

技術的には移行が順調でも、現場社員の抵抗感が最大の障壁になるケースも少なくありません。

  • 「新しいシステムは使いにくい」

  • 「今のやり方に慣れているから変えたくない」

  • 「移行作業が面倒で業務が止まるのでは」といった不安

こうした声が放置されると、せっかく導入したクラウドも**「使われないシステム」**となり、投資が無駄になります。

回避策

  • 現場巻き込み型のプロジェクト:導入初期から現場担当者の意見を反映

  • 段階的な導入:まずは小さな業務で成功体験を共有し、社内に広める

  • 教育とサポート:マニュアルや研修だけでなく、「気軽に相談できるサポート体制」を整備

ある物流企業では、新しい勤怠システム導入時に「現場説明会」を複数回実施し、社員の声を即座に改善に反映したことで、スムーズな定着に成功しました。

まとめ:クラウド移行とレガシー資産の攻略法

クラウド移行を阻む「レガシー資産」は、中小企業にとって大きな壁である一方、正しく整理すれば価値ある資源へと変わる可能性を秘めています。

本記事では、以下の流れで解説を行いました。

  • レガシー資産の正体と種類:古い業務システムや紙ベースの業務がDXの足かせになる

  • 捨てる vs 活かすの判断基準:セキュリティリスクや老朽化したものはリプレイス、価値あるデータはリファクタリング

  • 段階的モダナイズのアプローチ:棚卸し → 優先順位付け → 適切な手法選択 → 外部パートナー活用

  • 成功事例に学ぶポイント:小さな成功から始め、現場を巻き込み、経営層が意思決定する

  • 注意すべき落とし穴:コスト過小評価、セキュリティ盲点、現場の抵抗

つまり、クラウド移行を成功させるには「すべてを一気に変える」のではなく、段階的にモダナイズを進める戦略性が不可欠です。

もし貴社でも「古いシステムが足かせになっている」「クラウド移行を進めたいが方法が分からない」といった課題があれば、まずは自社の資産を棚卸しし、優先度をつけることから始めてみてください。

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「レガシー資産」を乗り越え、クラウドを最大限に活用することが、貴社のDX成功の第一歩となるはずです。

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