記事公開日
最終更新日
オープンソースだからできる!Mattermostの拡張性とカスタム開発による業務改善ガイド

はじめに:Mattermostを“オープンソース”で導入する意味
業務の効率化やコミュニケーションの円滑化を目指す中小企業にとって、ビジネスチャットの導入は今や不可欠です。SlackやMicrosoft Teamsなどのクラウド型チャットツールが普及する一方で、コストやカスタマイズ性、セキュリティの観点から「Mattermost(マターモースト)」を選ぶ企業が増えています。
Mattermostは、オープンソース(OSS)として提供されており、自社サーバーで運用可能なチャットプラットフォームです。特に中小企業にとっては、「月額課金不要」「自社仕様に応じた柔軟な開発が可能」「社内データを外部に出さない運用」など、数々のメリットがあります。
本記事では、「なぜ今、中小企業にとってMattermostが注目されているのか?」を明らかにしつつ、オープンソースならではの拡張性や開発自由度、具体的なカスタマイズ事例、業務改善への応用方法まで、実践的に解説していきます。
オープンソースの強みと拡張性
Mattermostの大きな魅力は、OSSとしての柔軟性と自社主導での開発が可能な点にあります。このセクションでは、「なぜ中小企業こそオープンソースに注目すべきなのか」、その理由と具体的な拡張ポイント、そしてセキュリティとの両立について詳しく見ていきましょう。
なぜ中小企業こそオープンソースを選ぶべきか
一般的に、ビジネスチャットツールにはクラウド型の有償サービスが多く存在します。しかし中小企業にとっては、以下のような悩みがつきものです。
-
「毎月のライセンス費用が重い」
-
「既存の業務フローにフィットしない」
-
「クラウドにデータを預けるのは不安」
こうした課題に応えるのが、オープンソースとして提供されるMattermostです。
▼オープンソースのメリット(中小企業目線)
項目 | オープンソース(Mattermost) | クラウド型サービス(Slack等) |
---|---|---|
初期・月額コスト | 基本無料(自社運用) | ユーザー単位で有償 |
カスタマイズ性 | 高い(ソースコード改変可能) | ほぼ不可 |
データ管理 | 社内サーバーで完結 | 外部クラウドに保管 |
拡張性 | プラグイン開発・API連携自由 | 制限あり |
Mattermostの構成と拡張可能なポイント
Mattermostは、モジュール構成が明確な設計となっており、以下のように拡張しやすい構造を持っています。
▼Mattermostの基本構成(概要)
コンポーネント | 内容 |
---|---|
サーバー | Golang製のバックエンド。チャット処理・APIなどの中核機能 |
フロントエンド | React.jsで構築されたUI(ブラウザ・デスクトップ・モバイル) |
データベース | MySQL、PostgreSQLに対応。メッセージ・ユーザー・チャンネル情報を格納 |
ストレージ | ファイルのアップロード先(ローカル/S3など) |
-
UIのカスタマイズ(フロントエンド改修)
-
新機能の追加(Botやプラグイン)
-
外部システム連携(Webhook、API連携)
-
自動化処理(通知、承認フローなど)
社内のエンジニアリソースが限られていても、部分的な改修や既存ツールとの接続から始めることで、段階的に活用範囲を広げていくことができます。
セキュリティ・コンプライアンスとの両立
「オープンソースってセキュリティが不安では?」という声もありますが、Mattermostはセキュリティ強化にも注力しているツールです。
▼Mattermostにおけるセキュリティ対策例
-
権限ベースのアクセス制御:役職や部門に応じて閲覧権限を制御可能
-
LDAP連携・SSO対応:Active Directoryなどと連携し、ログイン管理を強化
-
通信の暗号化(TLS/SSL):チャット内容やファイル送信時の盗聴防止
-
ログ・監査機能:誰が、いつ、どのチャンネルにアクセスしたかを記録
また、Mattermostはオンプレミス運用により社内完結型のセキュリティ対策が可能なため、業種によってはクラウド型よりも高い信頼性を確保できます。製造業・医療・教育機関など、情報漏洩リスクを極力下げたい業界でも導入が進んでいるのが特徴です。
プラグイン・Bot開発の実例
Mattermostの魅力は「導入して終わり」ではありません。実際の業務にフィットする形で“機能を育てていける”のが大きな特徴です。ここでは、Botやプラグインによる業務効率化の実例と、導入の流れを紹介します。
自社の業務フローに合わせたBot導入のメリット
日報提出、会議の予定通知、勤怠連絡、申請フロー…。中小企業の多くが、ルーチン業務に多くの時間を取られているのが現状です。
こうした定型業務に対して、MattermostではBotを活用した自動化が有効です。
▼Bot活用の具体例
活用シーン | Botで実現できること |
---|---|
出退勤報告 | /punch in コマンドで勤務開始を記録 |
日報提出 | 毎日18:00に自動通知+テンプレート送信 |
会議通知 | Googleカレンダーから会議前に自動通知 |
ワークフロー | 承認依頼→承認者へ自動通知&ボタン選択 |
このように、Botを活用することで「人がやらなくてもいい定型作業」を自動化し、本来注力すべき業務に集中できる環境を整えることが可能です。
人気のプラグイン例と導入方法
Mattermostでは、公式の「Marketplace」からさまざまな拡張プラグインを導入できます。これにより、特別な開発をせずとも便利な機能を追加し、日常業務の効率化が可能になります。
▼代表的な人気プラグインと活用シーン
プラグイン名 | 機能概要 | 活用シーン |
---|---|---|
Zoom Plugin | チャットからワンクリックでZoom会議を開始 | テレワーク中の定例ミーティング |
GitHub Plugin | プルリクやIssueの更新をリアルタイム通知 | 開発チームのタスク共有 |
ToDo Plugin | 簡易タスク管理ツールをチャットに追加 | チームの作業漏れ防止 |
Welcome Bot | 新規ユーザーに自動メッセージを送信 | オンボーディング・研修支援 |
Jira Plugin | Jiraチケットの更新を自動通知 | プロジェクト進捗の共有 |
-
Mattermostの管理画面にログイン
-
「プラグイン」→「Marketplace」を開く
-
Zoom Pluginを検索して「インストール」をクリック
-
Zoomの認証情報を入力・連携設定
-
利用ユーザーに使用方法を案内(例:「/zoom」コマンド)
インストールはノーコード・ノーリスクで試せるため、まずは手軽なプラグインから導入してみるのがおすすめです。
自社開発Botの構築ステップ
既存のプラグインで対応できない場合は、自社業務にフィットしたBotを開発する選択肢もあります。開発と聞くと難しそうに思えますが、MattermostはシンプルなREST APIとWebhookで構成されており、Botの構築は比較的容易です。
▼Bot開発の基本ステップ(Node.jsの例)
-
開発環境の準備:Node.js、npm、Mattermost APIライブラリをインストール
-
Botの作成:ユーザー登録、トークン発行、イベント検知の設定
-
Webhookの受信設定:メッセージ送信やボタンクリック時にイベントを検知
-
動作確認とデバッグ:ローカル環境またはテストチャンネルで動作検証
-
本番適用と運用:社内展開とフィードバックによる改善
// 例:特定キーワードに反応して返信する簡易Bot
app.post('/webhook', (req, res) => {
const text = req.body.text;
if (text.includes('日報')) {
sendMessage('こちらが今日のテンプレートです:\n1. 実施内容\n2. 課題\n3. 明日の予定');
}
});
ノーコードツールと違って、より業務に特化した処理を柔軟に設計できるのがカスタム開発の強みです。自社エンジニアで対応が難しい場合は、ベンダーに相談しての外注開発も視野に入れると良いでしょう。
API連携による業務効率化
Mattermostは豊富なAPIインターフェースを提供しており、他ツールとの連携や自動化にも柔軟に対応できます。この章では、APIの基本、実際の連携事例、ノーコードツールの活用まで紹介します。
Mattermost APIで何ができるのか?
Mattermostには、REST APIとWebhook(受信・送信)の2つの主なインターフェースが用意されており、外部ツールとのシームレスなデータ連携が可能です。
▼APIでできること一覧
機能カテゴリ | 実現可能な操作例 |
---|---|
ユーザー管理 | ユーザーの追加・削除・役職変更 |
チャンネル操作 | 新規チャンネル作成、参加メンバーの設定 |
メッセージ操作 | 自動投稿、通知送信、返信 |
ファイル操作 | 添付ファイルのアップロード・ダウンロード |
カスタムUI | インタラクティブなボタン・フォームの追加 |
-
他システムで特定イベント発生(例:Pleasanterでタスク完了)
-
Webhook URLにデータをPOST
-
Mattermostがその内容をチャットに自動投稿
この仕組みを使えば、**「必要な情報を必要な人に自動で届ける」**チャット中心の業務運用が可能になります。
他ツールとの連携事例:チャット通知・タスク連携
業務改善を進めるには、既存のSaaSや業務管理ツールとの連携が不可欠です。ここでは、特に中小企業で利用されやすいツールとの連携事例を紹介します。
▼代表的な連携事例
連携ツール | 連携内容 | 効果 |
---|---|---|
Backlog | 課題が追加・完了された際にMattermostへ通知 | タスク漏れの防止、リアルタイム共有 |
Pleasanter | 承認ワークフローの通知をチャットで自動配信 | 書類確認のスピードアップ |
Googleフォーム | 回答内容をWebhook経由でMattermostに投稿 | アンケート集計・社内共有の迅速化 |
「新しいアンケート回答がありました」
このような通知がチャットでリアルタイムに届くことで、チーム全体の認識スピードが上がり、アクションの遅延も減少します。
ノーコード連携も可能?Zapierやn8nとの組み合わせ
「API連携やWebhook設定は難しそう…」という方には、ノーコード・ローコードツールを使った連携がおすすめです。中でも人気なのが「Zapier」と「n8n(エヌエイトエヌ)」です。
▼各ツールの比較
ツール名 | 特徴 | Mattermost連携の例 |
---|---|---|
Zapier | UIが直感的で初心者向け | Gmailでメールを受けたらMattermostに通知 |
n8n | オープンソースで自由度が高い | Googleスプレッドシート更新→タスクBotに通知 |
「難しい開発をせずにまず試したい」という企業には、こうしたツールから始めるのが非常に有効です。
社内独自機能を追加するためのポイント
Mattermostの拡張性を最大限に活かすには、単なるツールの導入にとどまらず、「自社に最適な機能をどう実装するか」という視点が重要です。この章では、業務課題の整理から具体的な開発、そして運用体制の構築まで、現実的なプロセスを解説します。
カスタマイズの前に整理すべき業務課題
ツールの拡張を成功させるためには、まず「何を解決したいのか」を明確にする必要があります。
▼カスタマイズ前に行うべき準備
-
業務フローの可視化:現状の業務を図やフローで洗い出す
-
課題の特定:「手作業が多い」「情報共有に時間がかかる」などのペインポイントを列挙
-
改善の優先度を設定:影響範囲・改善効果・緊急性を基準に判断
-
関係者からヒアリング:現場のリアルな声を拾い上げる
例えば、「日報提出に毎日30分かかっている」という業務があれば、それをBot化して10分に短縮できれば、月間で数十時間の削減につながることもあります。
このように、機能開発は目的ではなく、手段であるという視点を常に持って進めることが重要です。
フロント・バックエンドのカスタム開発実例
実際に行われているカスタム開発には、日常業務に寄り添った、きめ細かい改善が多く見られます。
▼代表的なカスタム開発の事例
カスタム内容 | 実装方法 | 効果 |
---|---|---|
UIの変更(例:フォント拡大、配色変更) | Reactでのフロント改修 | 高齢者・現場スタッフの見やすさ向上 |
承認ボタン付き投稿 | カスタムボタン+Webhook | 承認・差戻しがチャット上で完結 |
チャネル別に自動テンプレート送信 | Bot+定時ジョブ | 書類提出・報告漏れの削減 |
部署別のレポート集計Bot | API+CSV出力連携 | 統計データの収集・集計が自動化 |
ポイントは「既存業務を壊さず、負担を減らす開発」を意識することです。現場の理解と協力を得やすくなり、スムーズな定着にもつながります。
保守運用体制をどう構築するか
カスタム開発を行った後に重要なのが、運用・保守の体制づくりです。せっかく開発した機能も、継続的に管理されなければ逆にトラブルの元になります。
▼運用体制のポイント
項目 | 内容 |
---|---|
マニュアル整備 | 管理画面・Bot設定・操作手順などを文書化 |
障害時の連絡ルール | 通報先・初期対応手順・復旧フローを決める |
アップデート方針 | Mattermost本体のアップデート方針と手順確認 |
担当者の配置 | 社内エンジニア or 外部ベンダーとの契約管理 |
まとめ:Mattermostの柔軟性を自社の強みに変えるために
オープンソースであるMattermostは、単なる「チャットツール」にとどまらず、自社に最適化された業務改善プラットフォームとして活用できる強力なツールです。
この記事でご紹介したように、
-
コスト削減+柔軟なカスタマイズが可能
-
プラグインやBotで業務を自動化できる
-
APIや外部連携でシステム全体の効率化が実現
-
社内の業務課題に合わせた開発ができる
など、Mattermostの拡張性はまさに中小企業の味方と言える存在です。
「うちの業務に合うチャットツールが見つからない」
「業務改善したいが、既存ツールでは限界がある」
そんな企業の方こそ、Mattermostの導入とカスタム開発を検討する価値があります。
社内に開発リソースがない場合でも、ベンダーや外部パートナーとの連携でスモールスタートが可能です。まずは既存プラグインからでも試してみて、段階的な導入を進めてみてください。
👉Mattermost導入・カスタマイズに関するご相談は、下記のフォームからからお気軽にどうぞ。
お勧めのクラウドサービスの記事 |
---|
Mattermost×セキュリティ:クラウド全盛時代にオンプレ型チャットが再評価される理由 |
Mattermost活用術:業務フローを効率化するチャンネル設計と運用ルール |
なぜ今、ビジネスチャットが「業務基盤」になるのか?中小企業が見落としがちな導入のメリットと選定ポイント |